「ダイナースクラブ」が富裕層に受け入れられない3つの理由

内藤 忍

富裕層向けクレジットカードのダイナースが、業績不振により120億円の減損処理することになりました。

ダイナースクラブは2015年に三井住友トラスト・ホールディングスが、シティーバンクから買収しました。しかし、その後の業績は悪化しています。その理由を考えてみました。

ダイナースクラブ公式サイトより:編集部

まず、間違えてはいけないのは、この手のカードを利用する富裕層はケチだということです。お得なものには出費を惜しみませんが、費用対効果には非常にシビアです。買収されてからのダイナースクラブは、ポイント変換率などのサービス改悪が続き、高額の年会費に見合ったメリットが期待できなくなりました。

富裕層であればあるほど、意味のない出費を嫌い、コストに見合ったサービスでなければドライに切り捨てられてしまうのです。

また、富裕層の嗜好は、一般人にはなかなか理解できません。残念ながら日本の銀行員の発想で経営しても、既存の顧客が真に求めているサービスを理解し提供することは難しいのです。富裕層はお金で買えない価値に大きな喜びを感じます。それがどのようなものなのかは、富裕層になってみないとわからないのです。

更に、買収によってせっかくのダイナースブランドが毀損されてしまったこともマイナス要因です。ダイナースクラブは三井住友信託銀行グループが買収し、社名を「三井住友トラストクラブ」に改めました。

これでは、せっかくのダイナースブランドが、一般の国内の銀行カードと同じブランドイメージになってしまいます。ダイナースブランドを前面に出し、銀行の名前は出来るだけ見せない方が良いと思います。

これ以上の経営状態の悪化を防止するには、経営方針の抜本的転換が必要です。

まずやるべきことは富裕層ビジネスに理解がある人材を集め、規模の拡大よりもサービスの充実に力を入れることです。

また、供給者側の収益重視の発想ではなく、従前から利用する優良顧客の声を反映させる仕組みを作らなければいけません。

私もダイナースのプラチナカードをメインカードとして使っていますが、これ以上のサービス改悪が続けば、他のカードにシフトするつもりです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年5月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。