日本経済新聞電子版によれば、日本郵政は大和証券グループ本社と提携し、ゆうちょ銀行と大和証券が投資信託の商品を共同開発するようです(写真も同紙から)。
日本郵政グループは既に、三井住友信託銀行や野村ホールディングスと投資信託に関する共同出資会社を作っています。しかし、期待通りの残高に到達していないようです。また、野村グループとは野村不動産の買収案件の失敗から関係が悪化しているようです。そこで、ライバルである大和証券との関係を深める意味合いもありそうです。子供の喧嘩のような、意地悪な対応です。
ゆうちょ銀は、貸し出し業務が認められていないため、運用収入と手数料で収益を高めていく必要があります。そこで手数料収入が期待できる投資信託業務を拡大することを目論んでいるのです。
投資信託の手数料収入は、販売金額を増やすだけでは高まりません。高コストのアクティブ型の商品を販売することが必要になります。
例えば、販売手数料がかからない(ノーロード)、信託報酬が年間0.2%の投資信託を1000万円販売しても、年間の手数料は2万円。その中から販売会社分の手数料を受け取ることになりますから、1万円くらいしか儲かりません。
しかし、販売手数料3%で、信託報酬が1.5%の投資信託を同じ1000万円販売すれば、販売時に30万円(これはすべて販売しているゆうちょ銀行の収益)、そして1年間で15万円の信託報酬が入ります(基準価額が変わらないと想定して)。合わせて年間で40万円近い収益が入ってくるのです。
大和証券グループからどのような商品が提案されるかはわかりません。しかし、ゆうちょ銀行のメインの顧客であるシニアの預金者を狙い撃ちにして、高コストの投資信託を販売して、収益アップを目指すとしたら、かなり筋の悪いビジネスだと思います。
ゆうちょ銀行が提携すべきなのは、三菱UFJ国際投信、三井住友トラスト・アセットマネジメントといった低コストのインデックスファンドを取り扱っている運用会社です。シニアの投資初心者・未経験者にこそ向いた商品だからです。
投資信託ビジネスで金融機関が収益を上げるためには、高コストの商品を販売せざるを得ない。そうすると、投資家は運用成績が悪化してしまうというジレンマがあります。株主に報いるために収益を追求する上場企業という形態は、資産運用ビジネスを展開する企業の形態としては、無理があるのかもしれません。
ゆうちょ銀行がどんな商品を投入してくるのか見極めていきたいと思います。
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年5月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。