自民党財政再建推進本部がとりまとめた、財政再建に関する文書を、大岡敏孝議員が公開しています。
『令和時代の財政再建についての共通基本認識』(概要)
『令和時代の財政再建についての共通基本認識』(本文)
大岡議員のポストも御覧ください。
今回の提言はあくまで「共通認識」です。財政再建に向けての取り組みそのものは、参院選後に議論されることとなります。
とはいえ、文章が固まる過程でも、各々の議員、アドバイザー、財務省、内閣府においてなかなか激しい議論がありました。その論点を紹介したいと思います。
1. どのような時間軸で財政再建を検討するか
財政諮問会議等では、10年先程度のスパンで検討を続けています。確かに経済の先は見通すことは困難です。しかし社会保障は人口と強く相関しますから長期予測が可能です。特に2040年には団塊ジュニア世代が全員高齢者となるため、現役世代の負担が高まります。その意味では、2040年より先の予測が財政再建で必要であると、一人の団塊ジュニア世代として訴えました。
2. 国が保有する資産で借金は減らせるか
公共投資が、防災・減災に向けて重要との指摘はありました。しかし、こうした資産の売却によって国の借金を減らすのは限界があるだろう、との認識が共有されています。
3. 国民の資産は減るのか減らないのか
国債発行を続けて政府の借金が増えても、国民一人一人の資産は減らない、といった議論もありました。ここについては、国債を保有できる人とそうでない人とで格差が生じるという議論がありました。
高齢化が進むと、離職や病気、年金の負担によって個人の資産全体も目減りすると私は考えています。そうなった場合、海外投資家への依存が強まり、金利急騰リスクが高まることも注意が必要です。
4. インフレに対応できるのか
仮にインフレが発生しても、財政出動を止めることで緩和できるとの議論もありました。たしかに公共投資は抑制できます。しかし、社会保障をインフレになったからといって切り下げることはできません。むしろ物価高に合わせて積み増す必要があります。社会保障を維持するためにも、常に財政を健全化させることの大事さは意見の一致がありました。
5. 消費税への対応
メディアの多くは、今回の提言で消費増税がいかに扱われるかに関心があったようです。本文の中では「消費税率については、リーマン・ショック級の出来事がない限り、法律で定められたとおり、本年 10 ⽉に10%に引き上げる予定である」と触れたのみであって、そこまでの論点にはなりませんでした。
団塊ジュニア世代こそ、財政再建の議論を
以上、自民党内での議論内容について紹介させて頂きました。
昭和・平成と日本をリードしてきた団塊世代はすでに70歳を超えています。人数としても、これからは団塊ジュニア世代が令和という時代を引っ張っていくことになります。そして、この世代が解くべき課題は、社会保障と経済財政のあり方です。目の前の消費税の話にとどまらず、これから10年20年かけて、どのような国のカタチをつくるべきなのか、長期的な視点で議論が活性化することを願います。