今日は暑い。気温は都内でも30度を超したところが多い。来週にかけて最高気温30度以上の真夏日地点もグッと増えるそうだ。35度の猛暑日になる場所もある。熱中症に気をつけなければいけない。
今回は、『ヘンな名湯』(みらいパブリッシング)を紹介する。著者は、「ひなびた温泉研究所」でショチョーの重責にある岩本薫さん。
本書では、日本のあっちこっちに、ひそかに佇む31か所のヘンな名湯を紹介している。紹介されている温泉はたしかにヘンである。ヘンなのに湯はすこぶるいい。へんでクセになる。ヘンで愛おしくなる。そんな名湯ばかりだ。
本書で紹介されている名湯は、一般的には知られていないものが多い。画像は、茨城県湯の網温泉に実在する旅館の名湯。ガラスの明り取りの窓があったり、趣のあるタイル絵があったり、大正ロマンを思わせるハイカラ風でレトロでいい感じだ。しかし、湯船だけがポリ製の味もそっけもない湯船だったりする。岩本さんは次のように解説する。
「なぜ、レトロでノスタルジックなこの世界観をぶち壊すのか?そのおもしろいアンバランス感がこの湯のミョーな味にもなっています。バカボンパパならいうに違いない。『それでいいのだ』。この湯は身体が温まる湯です。やっぱり濃厚な鉄分のおかげなのか、なんていうか温まりの時間差攻撃があります」(岩本さん)
「最初に湯に浸かったとき、湯の温度と塩分のためなのだろう、思わず『くぅ~っ』と声を出したくなる感じがあって、それからじわじわとさらに温まっていくみたいな、そんな温まりの時間差攻撃。なるほどなるほど、これはいい湯だなぁ」(同)
気になるのが湯の効能である。浴室の壁に古びて味わい深い木製の効能書きがあって、そこに「神経痛」「リウマチ」「胃腸病」と書かれている。しかも、その最初には「脳」と書かれている。”OH!Noooo” 。「脳」に効く温泉なんてステキじゃないか。頭がよくなるなら、頭も湯に沈めなければいけないと思わずにはいられない。宿泊はお食事付で4,500円~。
意味不明なオブジェ、奇妙な入り口、わけのわからない付帯施設などなどが圧巻。とってもへんだけど最高の名湯を知りたい人は必見。なかには、カオス的な名湯も紹介されている。秘湯好きの彼女なら喜ぶかも知れないが、ふつうのデートにはビミョーかも?
知られざる奇怪な31か所の温泉を、すべて岩本さんが徹底取材。こんな本ははじめてだ。来週にかけて真夏日がグッと増加、急な暑さで体調を崩さないようにご注意のほど。
[本書の評価]★★★(77点)
【評価のレべリング】
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★ 「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★ 「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★ 「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
星無し 「レベル0!読むに値しない本」50点未満
※評価のレべリングについて
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
『波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)を上梓しました。