意味が深いルノーとFCAの提携交渉

岡本 裕明

週末にとんでもないニュースが飛び込んできました。FCA(フィアット クライスラー オートモービル)とルノーの提携ないし統合話が進んでいるというのです。本件、現地時間月曜日朝8時より交渉が開始されるため、日本では火曜日にも大きなニュースをもたらす可能性があります。

(FCA公式YouTube、ルノーflickrより:編集部)

(FCA公式YouTube、ルノーflickrより:編集部)

どの様な形で両社がくっつのかはまだ不明で英語ニュースのタイトルもteam upであったり、partnershipであったりするので日経の記事にある「統合」まで踏み込むのかはまだわかりませんが、あり得る話ではあります。

FCAはリーマンショックを受けてフィアットがクライスラーを吸収合併した新会社であります。当時の経営責任者はイタリア系カナダ人、セルジオ マルキオーネ氏でなかなかのやり手でした。ところが66歳にしてがんで亡くなります。2018年のことでした。フィアット社はここで創業ファミリーからジョン エルカーン氏を会長に投入しながらも更なる合併相手を探し続けます。今回、先に提携交渉していたプジョーから色よい返事がもらえず、ルノーに乗り換えたものと思われます。

FCAは旧クライスラー系のブランド以外にフィアット、マセラッティ、アルファロメオがあり、ルノーに不足する高級車を一部配していることから経営の提携には一定のうまみはあるものと思われます。

ブランドを傘下にずらりと配するのはフォルクスワーゲンが得意とするところでしたが、仮にルノー/FCAグループができるとフォルクスワーゲンよりもはるかに強力なアライアンスになるはずです。理由は世界の市場をよりくまなくカバーしている点でしょうか?中国はやや弱みがありますが、相当の影響力は持つことができます。

では日産はどうだったのかという点ですが、推測ですが、蚊帳の外だった可能性もあります。日経にも「日産側は、FCAとルノーとの交渉については『何も聞いていない』(幹部)」とコメントされています。思うにルノーはFCAとの交渉が水面下で進んでいる際、その行方次第では日産との経営統合問題はFCAとの案件の展開次第でコントローラブルと考えた節がないでしょうか?

一方でルノーとFCAのアライアンスの噂は春先ごろからあり、当然、日産側は知っていたはず。これに対して日産側がFCAに水面下での事前の根回しができたかどうかは不明であります。もし、日産がFCAと事前交渉ががないとすれば交渉では不利な位置に立たされたことになります。ルノーとFCAがどういう形にしろくっつけば主導権は両社が握り、日産は中心的役割を果たしにくいでしょう。こういうことはビジネスの世界では往々にして起きるので今後の日産の出方に注目でしょう。

ではFCAはなぜ、提携先を探し続けたか、といえば次世代型自動車への開発能力の欠如以外の何物でもないと思います。北米を走る旧クライスラーの車はライトトラックも乗用車もパワーを重視した車が多く、根強いファン層を確保していますが先端技術という点ではフォード、GMに比し、完全に出遅れているとみてよいでしょう。

よって自動車業界の規模の経済のみならず、先端技術を求めるのであれば日産がキーになるはずで、このあたりが今後の交渉どころになるかもしれません。日産としてはこのアライアンス計画でどうやってポールポジションを取るのか、これが腕の見せ所となるでしょう。同社は幹部人材をシャッフルしている最中でタイミング的には難しいところですが、期待したいと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年5月27日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。