欧州議会:マクロン実質的大勝利という意外な結果

八幡 和郎

トランプ来日の影に隠れて日本のマスコミでは注目されていなかった欧州議会選挙だが、結果は保守(中道右派。EPP)・革新(中道左派。S&D)二大勢力や左翼の惨敗。中道政党(ALDE&R)や環境派(Greens/EFA)の大躍進。極右は伸びたが予想したほどでないということになった。(リンク先・欧州議会サイトの左図が前回、右図が今回の議席数)

欧州議会ツイッターより:編集部

日本のマス・メディアの欧州報道の質的低下はひどいものだが、上記のような構図もわかっていないし、フランスでの結果について極右の国民連合(マリーヌ・ルペン党首)がマクロン与党に勝利したというへんちくりんな要約をしているが、まるで見当外れだ。

フランスについていえば、国民連合は、23.6%で24議席。マクロンの共和国前進は22.6%で22議席。緑の党が13,1%で13議席。サルコジーらの共和党は8,1%で7議席、オランドらの社会党は6.4%で6 議席、極左ポピュリストの不服従のフランス6.1%で6 議席。共産党は2.5%に沈んで議席なし。もう先進国で共産党が残しているのは日本だけで恥ずかしいといえばいいすぎだろうか。

マクロンにとっては大敗が予想されてたのが僅差で善戦。共和党と社会党が惨敗して再選にはプラス。マクロン大統領の与党・共和国前進もそこそこ健闘し、次期大統領選挙でもルペンとマクロンの決選投票でマクロン再選の可能性が著しく高まった。

ただし、現在は過半数をとっている下院では沈没する可能性が強いだろうから、政権の枠組みを変えることは必要になるだろう。共和党、社会党、緑のどれを取り込むかバランス感覚が問われる。

一方、EUではユンケルの後任委員長選びが難問。従来の例だと、その意味でも欧州事務局長選びは大注目。欧州議会では中道右派(EPP)と中道左派(S&D)が二大会派で、より多い議席をとったほうが委員長を出すことが慣例になっている。

ところが、今回は中道右派が勝利したから、彼らが推薦するドイツのマンフレート・ウェーバーのはずだが、中道右派と中道左派と併せても半数に届かなかったの、過去の例は参考にならない。

しかも、キャスティングボードを握るマクロン大統領は経験があまりないウェーバーに難色を示しており、すんなりと同意しそうもない。もちろん、欧州中銀総裁の人事などと取引でウェーバー氏に同視する可能性はあるが簡単ではない。

そうなると、緑の党と連携して中道左派のオランダ人ティマーマンスに乗れば勝てるが、それも賭けだ。そうなると保守系だがフランス人で英国との交渉で手腕を評価されたバルニエ首席交渉官という手もないわけでない。

キャスティング・ボードを握ったマクロンがどう出るか目が離せないが、あまり器用すぎることをすれば、火傷する可能性もある。

追記:ルノーとフィアット・クライスラー・グループの経営統合交渉開始のニュース。欧州では好意的な報道が多い。そうなると、日産も大が小を飲み込むのはおかしいとか、会社法を読んだこともなさそうな主張すらいえなくなりそうだ。