感情的に怒っている人にはどう対処するのがいいのでしょうか。いちばんいいのは「近づかない」ことです。今回は、拙著『波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)のなかから関連するエッセンスを紹介します。
秘書をしていた頃、先生の機嫌があきらかに悪く、ミスをしたら怒り出すことが容易に予想できる日がありました。
それを察した先輩秘書は「オレちょっと出てくるから、留守番よろしくね!」といって、いきなり事務所を出て行ったことがありました。当時、私は駆け出しです。いくら機嫌が悪くても、私に当たることなどできません。
先輩秘書はもう何年も先生と寄り添ってきた仲です。先生は、その先輩には当たることができるのです(いまならパワハラと呼ばれるかもしれませんが)。さて、それを察した先輩は事前に「逃げる」という手段に出ました。
案の定「おい、○○はいないのか?」と先生が問いかけてきます。それでも「すみません。先ほど何か用事があるらしく外出しました」と私が答えると、先生も「そうか」といって、機嫌が悪いながらも自室に帰っていきました。
ここで重要なことは「人は何時間も怒り続けられない」ということです。先輩も1時間くらいで戻ってきたのですが、そのときには先生の機嫌もやわらいでいました。
ただ、その先輩がすごいのは、戻ってきたあとの対処法でした。先輩はすぐさま先生のところに行き、こう言ったのです。「先生、すみません。尾藤から聞きました。私が不在中、何かご用事があったそうですね。申し訳ございません」。
ポイントは、先生から呼ばれる前に、自分から謝りに行ったところです。出鼻をくじかれると矛をおさめざるをえないのが人の情というものです。とはいえ、この「距離を置く」という方法が使えないこともあります。本当に怒っている人を目の前にしてしまったときは、どうすればいいのでしょうか。
その場を収めたいのであれば、ひたすら謝り続けるしかありません。少しでも反論しようものなら、相手の怒りに火を注ぐだけです。その場では反論せず、相手の怒りが発散されるのを待つしか対処法はありません。だからこそ、怒っている人にはできるかぎり近づかないことが、最善の対処法ともいえるわけです。
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
『波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)を上梓しました。