共同通信は日韓の防衛部門トップが6月1日にシンガポールで会談したことを報じた。レーダー照射問題に関して、岩屋防衛相が「自衛隊機は適切に飛行していた」と主張し、再発防止を要求したのに対して、鄭国防相がレーダー照射は事実無根だと否定して、議論は平行線に終わったという。
日韓、レーダー照射で平行線 両国防衛相が非公式会談 https://t.co/kqbKtm7zpT
— 共同通信外信部 (@kyodo_gaishin) 2019年6月1日
掲載写真が両トップの緊張感の欠如を物語っていて腹が立った。この問題の議論を含む会談だからといって、終始仏頂面していろとはいわぬ。しかし、世界中に拡散する写真撮影でこんなニヤけた表情を撮られるような人物に、筆者は日本の防衛を任せたくない。目は口ほどに物を言う。この人は「3人産んで」の桜田さんより100倍質(たち)が悪い。
一方の鄭国防相は空軍大将で合同参謀議長を務めた制服組トップ経験者。航空自衛隊幹部学校の指揮幕僚課程と幹部高級課程の両方を修了した知日派らしい。同様に知日派といわれた文議長とは違い左派思想ではないようだが、独裁的な文大統領の下ではそんな経歴など無に帰される。事件の直後、軍が照準レーダー使用を認めたのを、韓国政府・大統領府が直ぐに否定したことがそれを物語る。
偶さか1日の台湾中央社は「トランプ氏の前で中華民国国旗はためく 米空軍士官学校卒業式」題して、トランプ大統領を迎えての米空軍士官学校(US Air Force Academy)の卒業式が5月30日に行われ、司会者が台湾人卒業生の出身国として「台湾」の呼称を用いたことを報じた。
今期の卒業生は900人余りで、外国出身者は台湾、カザフスタン、韓国、タイ、シンガポールなどの約10人とのこと。トランプ大統領臨席の場でわざわざ「台湾」と呼称したのは中国への当て擦りに相違ない。
5月25日には台湾の国家安全会議李大維秘書長が5月中旬にワシントンでボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)と会談していたことが報じられた。台湾のNSC秘書長が米の安全保障担当補佐官と会うのは1979年の断交以来初めてで、早速、中国が反発声明を出した。この緊張感に引き換え岩屋大臣のニヤケ振りはなんだ。
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さて、同Academyのサイトを見ると、語学講習3〜4週間のCSLIP(受講国:中、仏、独、日、ラトビア、メキシコ、モロッコ、ポルトガル、スペイン)、1学期の軍事学留学のCSEAP(ブラジル、チリ、コロンビア、加、仏、独、日、シンガポール)、1学期の語学学生留学のCSSAP(中、日、ラトビア、メキシコ、モロッコ、ポルトガル)、1〜3週間の士官候補生留学のFAV、4年間の国際カデットプログラム、軍人交換プログラム(ブラジル、フランス、ドイツ、日本、韓国)など多様なコースがある。
日本の防衛大学校も士官候補生の留学生や短期の研修生の受け入れ制度がある。これまでの受け入れ国は、留学がタイ・シンガポール・マレーシア・フィリピン・インドネシア・モンゴル・ベトナム・韓国・ルーマニア・カンボジア・インド・東ティモール・ラオスの13ヶ国、士官候補研修生の受け入れ国は、米、豪、韓、仏、シンガポール、タイ。
筆者の友人宅は防大にごく近いのでこれら留学生の休日ステイを毎年受け入れている。休日ステイは正式名称ではないが、休日を日本人家庭で過ごし、日本の生活や文化に親しんでもらおうというボランティアだ。これまでベトナム、タイ、東チモールなどの方を受け入れたと聞いている。母国に帰って国を守るという重要な任務を担う人達に日本を理解してもらうことは大切だ。
だが、鄭国防相が修了したという航空自衛隊幹部学校幹部高級課程(AWC)の留学期間は約25週、指揮幕僚課程(CSC)の方は約47週なので、通算すると日本留学は約1年半だ。それを思うと、防衛大学校の留学生がいかに日本の良いところを学んだところで、母国の国情や為政者次第でその経験が無に帰してしまうのは何とも残念なことだ。
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ついでに防大の話を少々して本稿を結びたい。基地の街でもあり米兵が闊歩する横須賀だからか、防大生たちは何となく肩身が狭そうにしている感じを受ける。地方から出て来くる学生が多いこともあろう。我が母校からも毎年防大生が出る。筆者の同期にも潜水艦艦長や戦車乗りなど数名いた。何代か前の統合幕僚長も先輩だ。
少し前に防大生のいじめが新聞沙汰になった(US Air Force Academyでも黒人差別の落書き事件が報じられたがこちらはヤラセだった)が、防大生も人の子、いじめぐらいあるだろう。数人で休日を過ごすアパートを借りる輩もいるらしい。旧軍でも同様な息抜きをする者がいたと何かで読んだ。
防大は走水海岸に面した小原台という丘の上にある。昭和30年代近半に小学校高学年だった筆者は夏になると毎日泳ぎに行った。今は埋め立てられて住宅街になった馬堀海岸は遠浅で素晴らしいが、少し泳げるようになると急深の走水まで足を延ばす。
沖合に低い飛び込み台があり、さらに十数メートル沖に2~3メートルの高さのパイプで組んだのがある。防大生用の飛び込み台だ。ここに登るのがガキ大将の証。台の上からは丘の上から海水パンツ姿の防大生が縦隊で降りてくるのが見える。子供心にも実にカッコよかった。
高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。