慣用句とは2つ以上の単語が連結して、まったく異なる意味で定型句として使われるものです。使いこなせれば文章の質もアップしますし、何より表現力も豊かになります。
今回は、14冊目となる著書『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)のなかから関連するエッセンスを紹介します。
慣用句は、長い間使われてきた便利な言葉ですが、意味を間違えて使われている場合が多いので、注意が必要です。ここでは、間違えやすい慣用句を紹介します。
<間違えやすい慣用句>
●気が置けない
気配りや遠慮を必要とする関係に使っている人がいますが、本来は、仲がよくて遠慮しなくてもいい関係に使います。
●敷居が高い
レベルが高くて分不相応な場合に用いるのは間違いです。本来は、後ろめたいことがあってもう一度行くには抵抗がある場合に使います。
●檄(げき)を飛ばす
激励するという意味ではなく、本来は、広く世間に知らしめることをあらわしています。
●憮然(ぶぜん)とする
腹を立てている顔つきをあらわす場合によく使われていますが、本来は失望、落胆してぼんやりしているさまをあらわします。
<つかい方が難しい表現>
誤った使い方をしているケースが多いのは慣用句だけではありません。日本語には微妙な表現が多く、使い方がとても難しいのです。間違いが多い言葉をあげてみました。
●適当
本来は「きっちり当てはまる」という意味ですが、今では「いい加減」という正反対の意味に使われる場合がほとんどです。
●役不足
能力が足らないという意味で使用する人が多いのですが、正しくは、役目が軽すぎることをあらわします。
●煮詰まる
「成果が出ず、煮詰まった状態」など追いつめられた状況で使われがちですが、本来は、議論が出尽くして結論の出る状態になること。結論が出る寸前に用いるのが正解です。
●失笑
あきれるような場面に、「失笑を買う」と使うのは間違い。本来は、思わず笑い出してしまったという意味です。
●破天荒
無茶苦茶なことや常識外のことをあらわす際に使われがちですが、本来は「今までできなかったことを成し遂とげること」をあらわします。本来はほめ言葉です。
●潮時
限界が迫っているときに使いがちですが、本来は一番いい時期をさす言葉です。
●(○○の)さわり
最初の部分、冒頭だけと思われがちですが、本来は話の盛り上がりポイント、要点や最も印象に残るところをさします。
●確信犯
悪いと知りつつやる場合に用いるのは間違い。自分の行いは正しく、社会や周囲が間違っていると信じている行動をあらわします。
いかがですか?みなさんは正しく使えているでしょうか?このようなことを確認しながら文章を読むと意外に楽しいものです。
<参考書籍>
『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)
尾藤克之(コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員)