バンクーバーの酒屋に最近入った人はあることに気がつくかもしれません。「Nude」と記された白い缶の飲み物がどこの酒屋でも大プッシュされているのです。実はこの飲み物、バンクーバーの会社が生産しているですが、昨年、あまりのブームで生産が追い付かず、今年は満を持しての大勝負に出ているようです。
これはウォッカベースでアルコール分はビールと同じ5%、フルーツ系の様々な味がありますが、最大の売りはロー カロリー、シュガー フリー、グルテン フリーでなるべく健康に気を配った材料を使うというコンセプトなのであります。
飲んでみるとなるほどさっぱり、すっきりというのが正しい表現でしょうか?飲みやすく、案外、クイクイいけてしまうかもしれません。
バンクーバーはクラフトビールでも有名で数多くが競っていましたがそれもピークは4-5年前。最近はクラフトビールの工場直販店に飲みに行っても曜日次第ではガラガラということもあります。(こちらは工場のスペースに簡易テーブルがあり、そこで飲めるのですが、つまみがなく、持参するか、店先にきている移動式のフード販売で買うような仕組みのところが多くなっています。)
バンクーバーに限らず北米全般でクラフトビールに代わるように出てきたのが上述のNudeのようなウォッカやジンをベースにした健康志向の強いアルコールドリンク。それに対してクラフトビール会社も女性好みのフルーツ系ビールを大プッシュしており、間違って買うとあまーいドリンクになってしまいます。
最近、アサヒビールの守勢という記事を読みました。長年のキリンビールとの戦いののち、スーパードライで首位街道をひた走ったものの最近、そのアサヒに勢いがないというものです。世界で進むビール離れのトレンドが日本でも例外ではないということなのでしょう。ただ、その記事で気になったのはアサヒはビール販売の首位を死守できるというコメントでありました。
これは大きな戦略ミスを引き起こす可能性があります。アルコールの嗜好トレンドはどんどん変わります。かつては日本酒、焼酎、ビールぐらいしかなかったのです。なので多くの中高年は親しみ続けたあの味から脱却できません。ところが今はあまりにも種類が増えました。ハイボールにストロング酎ハイは単に安くて酔えるだけではなく、ビールの代替という発想に見えます。
日本の酒販メーカーは飲食店向け卸と小売りという二つの部門を通して4社のライバル競争に明け暮れ、新たなドリンクを生み出すのが後手後手に回ったというのが私の感想です。上述のアサヒの話でもビールが首位だろうが、人気が下火のビールで首位にいることは自慢でも何物でもないことに気がついていないのが懸念される点であります。
大手酒販メーカーは既存カテゴリーに対する社内の自負が逆に新製品を生み出す内部の力を削いでいる気がします。事実、上述のNudeも全く知らない新興企業発です。つまり、市場は常識破りの新製品を求めているのに企業はイメージを大事にし、保守的経営に固執するという流れでしょうか。
ビール会社は飲み屋のトレンド、酒屋のトレンド、そして街の声をもっと研究すべきかもしれません。そうそう、我々は「ビール会社」と言うからいけないんですね。アルコール飲料会社に変身してもらう勢いで頑張ってもらいたいものです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年6月6日の記事より転載させていただきました。