今年も行政事業レビュー公開プロセスに参加している。厚生労働省では6月6日に前半戦があった。対象となった四件すべて、最終受益者まで手が届いているか心配が募る事業であった。
子どもを保育園に預けるときに気にかかるのが「子供が病気になったらどうしよう」である。入院するような大きな病気は稀かもしれないが、発熱や嘔吐はいつか必ず起きる。
入院が必要なほどではないが集団保育は適当ではない子供を病児、回復期にある子供を病後児、登園後に体調を崩した子どもを体調不良児と呼ぶ。豊島区では病児は区内病院一か所で、病後児はその病院と三つの保育園で預かっている。2018年度に病後児保育を利用した子どもの総数は677人日だったそうだ。体調不良児の合計は5437人日だが、保育園児の総数は5685名だから、平均すれば子どもは年に1回登園後に体調不良になる。子どもが体調不良になったら医務室などに隔離し、保護者に連絡する。9割以上は保育時間終了前に保護者が引き取るそうだ。
既存の保育園に体調不良児用に隔離された部屋を作り看護師を配置すると補助金が出る。しかし、実施件数は2016年度2か所、17年度3か所、18年度3か所と極めて低調である。一方、厚生労働省自身の集計では2017年度の対応施設数は1255で、前年度よりも209か所増加している。
どうして保育園は補助金を利用しないのだろうか。看護師の配置を求める点に最大の問題がある。年に1回登園後に体調不良になると仮定すると、全国平均の定員75名の保育園では3日か4日に1回以下しか体調不良児は発生しない。看護師を常駐させるのは小規模保育園では経営的に大きな負担になる。
訪問した豊島区の保育園では看護師は0歳児の面倒を保育師と一緒にみるという形でこの問題に対応していた。厚生労働省は自園だけでなく隣接する保育園も含めて、看護師には保健業務について欲しいそうだ。しかし、どの保育園でも同様の態勢がとれるとは限らない。
急いで保育園に迎えに来て欲しいと言われても仕事の都合でむずかしい場合もあるだろう。体調不良児の保育は推進すべきだが、それならば看護師常駐の制限は外して、近隣の病院や介護施設等から看護師が駆け付けるといった仕組みも許容するのがよい。既存の保育園の改修にしか補助金が出ないのも不思議である。待機児童対策が叫ばれている今、新設される保育園にも適用したほうが保護者のニーズに応えるだろう。
公開プロセスの結論は事業全体の抜本的見直しになった。最終受益者である子育て世代が抱える課題には絶対に応える必要があるのだから、しっかし改善して欲しい。
山田 肇