各地で保育園児を巻き込む交通事故が相次ぐなか、兵庫県西宮市で13日午前、歩道を歩いていた園児の列に車が突っ込む事故が起きた。NHKニュースなどによると、同日午前9時55分ごろ、保育園近くの公園に向かうため、園児17人が保育士2人に引率され、2列になって歩いていたところに、69歳の女が運転する乗用車が突っ込んだ。
この事故により、6歳の女の子が肩の骨を折る重傷。5歳の女の子が軽いけが。女は自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)の疑いで現行犯逮捕された。幸いにも死者こそ出なかったが、ネットでは、またも高齢者が子どもを巻き込む事故を引き起こしたことに怒りの声が挙がるとともに、事故を起こした女が即逮捕されたことで、あの問題が再燃した。
ツイッターでは
この婆さんは逮捕したのに何故上級国民の飯塚容疑者は逮捕しないんだ
こちらも即逮捕。敏速な逮捕、いつもありがとうございます。警察様、違和感ありませんか?何の事かわかりますよね?
などと、池袋の事故を起こした旧通産省工業技術院元院長の飯塚幸三容疑者が逮捕されなかったことを再び非難する意見が出た。
さらにツイッターのトレンドに一時入ったのが、「飯塚チャレンジ」だ。西宮の事故報道があった直後、次のようにツイートする人が続出していた。
飯塚チャレンジ流行りすぎてるのマジでやめろ
西宮で飯塚チャレンジあったんか
中にはハッシュタグまでつけてツイートする人も。この「飯塚チャレンジ」とは、ネットスラングとみられるが、ヤフーのリアルタイム検索によれば、遅くとも5月15日ごろにはツイートされ始めていた。
その日は、千葉県市原市の公園で園児が遊んでいたところに、65歳の男が運転する乗用車が突っ込み、保育士が骨折する事故が発生。このニュースに反応した人たちがツイートしているのが確認できる。
スラングの定義を知る上で、参考になるのが、同日のリアルタイム検索の「適合度」順で最上位になったツイートだ。
アクセルを踏んだ覚えはない。突然、車が急発進した」と話した容疑者(65)は無勲章運転と非上級国民罪で逮捕 「アクセルが戻らなかった」と言えば飯塚幸三リスペクトが認められて飯塚チャレンジ失敗しなかったかもしれない。※表現等、一部編集
辛らつな物言いではあるが、この投稿から、「飯塚チャレンジ」とは、飯塚容疑者が叙勲受章者で、事故を起こしても警察に逮捕されなかったことを皮肉混じりに非難する意味で、使用されていることがうかがえる。
また、過去30日間(5月15日〜6月14日)のリアルタイム検索によると、「飯塚チャレンジ」がもっともツイートされたのが、5月23日の18187件と、前日の24件から激増した。
この原因として考えられるのがサバイバルゲームの愛好者というツイッターユーザーの投稿だ。「最近老人ドライバーによる悲惨な事故が多発してるので、この装置の設置を進言したい」として、海外製の動画をハッシュタグ付きででアップ。この動画では、高齢ドライバーによる高速道路への逆走侵入対策として、自動車が自壊する装置をコミカルに紹介して約35,000RTの反響を呼んだ。
最近老人ドライバーによる悲惨な事故が多発してるので、この装置の設置を進言したい#飯塚チャレンジ pic.twitter.com/vcymRbupc7
— Nell Koshka (@nell037) 2019年5月20日
「上級国民」を始め、ネットスラングは、独特の辛らつさと、マスコミ報道ではまず流れない不謹慎な響きもあるが、編集プロセスを経ていない分、社会の理不尽に対する喜怒哀楽の感情を剝きだしにしており、「生の世論」と言える部分もあるかもしれない。
なお、西宮の事故と同じ時間帯に、警視庁は池袋で飯塚容疑者を立ち会わせて初めての現場検証を行った。