米国のトランプ大統領は地球温暖化に懐疑的な姿勢を貫く一方で、アメリカ人の間では地球温暖化への意識が着実に変化しつつあります。
2019年の北東部のポーラー・ボーテックス(極渦)の他、中西部の洪水、さらには2018年のカリフォルニア州の干ばつなど、米国でも地球温暖化に関わる極端な気候変化が見られていることが一因です。ついでに申し上げるなら近年、アメリカ人の間で自身をリベラル派がじわり増加している点も、サステナブルな地球への個人的な取り組みを後押ししているのでしょう。
そのような状況下、エコバッグの利用や脱プラスチックをめぐる運動が加速するだけでなく、”カーボン・オフセット”という取り組みがその根を米国でめぐらせつつあります。カーボン・オフセットとは、環境省いわく「日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方」です。
人間は、食事や買い物、通勤を始めとした移動を通じ、生きているだけで二酸化炭素を排出してしまうもの。世界銀行によれば、アメリカ人1人当たりのCO2排出量(同等量)は2014年時点で平均16.5トンに及びます(ちなみに日本人は1人当たり9.5トン、中国人は同7.5トン)。3億人超の人口を考えれば、アメリカ人のリベラル派を中心にCO2排出量の削減だけでなく、相殺に動きたくなるというものでしょう。ソーシャルメディアもあって、自身の善行をアピールする場もありますからね。
米国でカーボン・オフセットで知られる主な非営利団体などは、こちら。主に植林をはじめ再生エネルギー事業、環境保護などをサポートすることで自身のCO2排出量を相殺します。その他、非営利団体クール・エフェクトの場合は、飛行機の移動時間に合わせてCO2排出量を相殺する費用を支払うことも可能なのですよ。
例えば飛行時間が10〜12時間ならCO2排出量は1.89トンと算出され、相殺に必要な価格は15.82ドル也。旅行に出掛ける友人にカーボン・オフセットをプレゼントすることもできます。
カーボン・オフセット、アメリカ人の間での知名度はといいますと・・・イプソスの世論調査によれば、18歳以上のアメリカ人のうち54%が認識していました。しかし、実際に利用するか否かは別のお話で、カーボン・オフセット経験者は未だ12%に過ぎません。
では、どんなアメリカ人がカーボン・オフセットを利用したのでしょうか?男性と女性の比較では、男性が20%に対し、女性はたった4%でした。学歴では、大卒が24%に対し大卒以下は8%となったように、意識の高い方々が比較的積極的であることが分かります。
年齢別では、55歳以上が3%程度に対しミレニアル世代を含む18〜34歳が24%を占めました。ただしこの差は環境意識の違いというより、デジタル・リテラシーが左右したと考えられます。マーケティング調査会社シェルトン・グループが2017年に行ったサーベイでは、①新聞や空き瓶などのリサイクルに努める(ミレニアル世代=34%、全体=52%)、②買い物袋を持参する(ミレニアル世代=37%、全体=50%)、③室内設定温度に配慮する((ミレニアル世代=33%、全体=54%)と、今年23〜38歳となるミレニアル世代が全て下回っていましたからね。
(カバー写真:Time’s Up! Environmental Organization/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年6月11日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。