銀行 VS フェイスブック

岡本 裕明

一見、何の関係もなさそうな銀行とフェイスブック。が、数年後には銀行にとって最も強敵なライバルとなるかもしれません。

Calibra(カリブラ)ロゴ:編集部

Calibra(カリブラ)ロゴ:編集部

フェイスブックが発表したCalibra(カリブラ)はスイスのLibra (リブラ)Associationが開発した仮想通貨をフェイスブックに実装するというものであります。開発をしているリブラには世界の名だたる企業、VisaやMastercardといったクレジットカード会社からスポティファイ、イーベイ、ウーバー、リフト、ペイパルといった企業名が数えるだけで29社並び、それら企業は最低10ミリオンドルの出資を行っています。残念ながら日本企業は一つも入っていません。

フェイスブックがそれを2020年から実装すると利用者27億人の間のお金のやり取りが無料かほぼ無料の状態でできるようになります。フェイスブックは当初はワッツアップとメッセンジャーで取り込み、将来的にはiPhoneやアンドロイドの標準アプリにすると発表しています。

Calibra(カリブラ)イメージ:編集部

Calibra(カリブラ)イメージ:編集部

ちなみに資金の裏付けですが、複数通貨や国債といった非常にボラティリティの低いものをベースにするとしています。(複数通貨の組み合わせはお互いの強弱を打ち消すため、ボラが実質的になくなる効果が期待できます。)

当然ながら既存の仮想通貨であるビットコインなどはその存在意義がほとんどなくなる可能性があります。(ビットコインは実際に使用するには極めて不便でありほとんど誰も使えない通貨であり、個人的には単なる投機対象商品でしかないと考えております。仮に投信から外れるようになれば相場としての役目は終えるとみています。)

ところで日本にはないのですが、当地では銀行の送金サービスにE-Transferというものがあります。これは国内送金は一定額($2500-$3000)までは送金が無料で瞬時に相手口座に入金できる仕組みとなっています。私も顧客からの支払いを一部E-transferで受けていますし、給与の支払いをE-transferで行っている部門もあります。これはメール、ないしスマホを媒介とした送金で昔からある手法で何ら珍しいものではないのですが、それを銀行が一般顧客に提供しているものであります。

こう見ると銀行はいったいどうやって稼いでいるのか、という疑問すら出てくると思います。

かつて電話会社は通信代で儲けていました。私などは国際電話をよくかけていたのでどこのキャリアが安いかを比べながら苦労して掛けていたものです。ところがその通信費、今や基本的にはゼロです。また、カナダのスマホから日本の通常の固定電話にもただのような金額で掛けられます。(逆もしかり) ましてや固定電話から固定電話の通話料は基本料以外、請求を見たことがありません。つまり、それまで当たり前だった通話料ビジネスは20年で消滅したのであります。

銀行は今、振込手数料、ATMの使用料などが重要な収入源とされています。セブン銀行などはそれでもっているようなものです。しかし、そんなビジネスは確実に崩壊します。もちろん、そんなことあるわけない、とおっしゃる方もいるでしょう。

では、皆さん、電車乗るとき、いちいち切符を買っている人はどれぐらいいますか?まずsuicaやPASMOなどで乗るでしょう。どれだけ抵抗している人がいても一度使うと虜になってしまうものです。フェイスブックのカリブラはもともと27億人もいる利用者に提供できるという点で圧倒的潜在顧客がいます。この勢いに立ち向かうのではなく、それを時代の趨勢ととらえるべきでしょう。

とすれば銀行は何をすればよいのか、であります。

制度的な問題や規制もありますが、今話題の2000万円問題を解決に導く役目が果たせないでしょうか?日本で欠如していた教育にマネーがあります。ほぼ全ての国民はマネーに対してその管理や投資について体系的教育を受けていません。それゆえに2000万円問題が異様に注目されてしまったと考えてみたらどうでしょうか?

一人ひとりの財産やキャッシュフローをベースにより健全な財政プランの下、余生の過ごし方のアイディアを提供するとしたらどうでしょうか?もちろんFPといった専門職はあります。しかし、そういうサービスはお金を持った一部の人たちだけのサービスという認識ともともと人が足りないという問題を抱えています。もしも有り余る銀行員がそれに代われるならどうでしょうか?つまり銀行員はお金のドクターになるのです。

ではどうやって資格を取るのか、と言われるでしょう。そんなものはAIにやらせればよいのです。資格は人間個々の能力にヘッジしています。しかし、AIにはもともとその能力を備えさせることができます。つまり、正しい操作を介して人間としてのコミュニケーションを通じて助言するサービスにしたらどうでしょうか?

とても紋切り的ではありますが、私の考える銀行の生き延びる道の一つであります。これなら地方銀行はしばし、生き残れるはずです。これを聞いた銀行頭取は泣いて喜ぶと思うのですけどね。

仮想通貨が変える銀行のビジネスの時代はもうそこにきているようです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年6月19日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。