毎日新聞は新聞の矜持を取り戻せ

原 英史

毎日新聞(21日付)ではまた、「隠蔽審査で謝礼 内閣府 原座長代理に」との見出しの記事がでている。11日以降、私が反論するたびに論点がすり替わってきているので、いちおう整理しておく。

1.記事:原・特区WG委員が立場を利用して200万円の指導料受領、会食も
→反論:事実でない。

2.記事:審査する側の委員が特定提案者に助言
→反論:助言は特区WGの本来業務。ヒアリングは「審査」でない。

3.記事:ヒアリング開催を隠蔽
→反論:提案者を守るために非公開。「隠蔽」にあたらない。

4. 記事:原委員が会議で恫喝的発言
→反論:会議では丁寧な言葉づかいで話しているはず。

5. 記事:隠蔽審査で内閣府が原委員に謝礼(=いまここ)

毎日新聞(21日付)

今日の見出しはまた、不正な「謝礼」を私が特別に受け取ったかのようにみえるが、記事をよくよくみると、非公式会合で委員謝金が出ているというだけの話だ。

役所のさまざまな会議で、非公式・非公開の会合にも委員謝金が支払われるのは、一般的なことだ。特区WGに限らないし、ばかばかしくて言うまでもないが、私だけが受け取っているわけでもない。

委員謝金の話まででてきたので、いちおう申し上げておくと、政府の各種会議委員を務める多くの人たちは、政府の会議に出席する時間に、本来の仕事をすれば、委員謝金とは桁の違う規模で経済活動を行い、収入も増やせる。それでも、政府の仕事に参画する使命があると思って、委員を引き受けている。

また、委員謝金が出るのは、あくまで会議などの参加時間だけだ。私が委員を務める特区WGや規制改革推進会議などもそうだが、事前に資料を読み込み、参考情報を集め、会議での議論の準備をするために、多くの委員たちがしばしばその何倍もの時間も費やしている。

毎日新聞は「委員謝金をもらいすぎだ」と指摘したいのかもしれないが、笑ってしまうレベルで本当に情けない。

毎日新聞記事では論点をすり替え続けているが、これまで私が指摘したことについてうやむやのままだ。「審査」も「隠蔽」も私がきちんと説明して否定したはずだが、21日の見出しでもまだ用いている。

毎日新聞社の方々はご存じのはずだが、「新聞倫理綱領」(日本新聞協会制定)になんと書いてあるか、引用しておく。

「報道は正確かつ公正でなければならず、記者個人の立場や信条に左右されてはならない。」

「新聞は報道・論評の完全な自由を有する。それだけに行使にあたっては重い責任を自覚し、公共の利益を害することのないよう、十分に配慮しなければならない。」

「報道を誤ったときはすみやかに訂正し、正当な理由もなく相手の名誉を傷つけたと判断したときは、反論の機会を提供するなど、適切な措置を講じる。」

毎日新聞の11日以来の報道、またそれ以前からの一連の取材は、「新聞倫理綱領」に明らかに反する。私は、メディアの役割は大事だと思っているから、安易に「新聞をつぶせ」などと唱えるつもりはない。毎日新聞社には、今からでも姿勢を根本的に改め、謝罪・訂正を行い、あるべき姿を取り戻してほしいと心から願っている。

私が毎日新聞社社長に送付した「抗議書」では、「到達から7日以内」との期限を設定した。期限は24日(月)だ。対応をお待ちしている。

最後に、毎日新聞(21日付)の1面にも触れておく。
また「加計」を取り上げて、「加計でも非公式審査」と見出しを掲げている。だが、この記事にでてくる非公式打合せは、とっくに報じられ、国会でも議論済みだ。折衝が膠着状態になったときに非公式な協議の場を持つのは、特区WGに限らず、通常行われる。

毎日新聞は、今回の「原委員の疑惑」追及がコケそうなので、以前に大人気を博した題材の残像に頼ろうとしたのかもしれない。だが、それで1面トップでは、さすがに「新聞」の名に値しない。新聞の矜持を取り戻してもらいたい。

原 英史
1966年生まれ。東京大学卒・シカゴ大学大学院修了。経済産業省などを経て2009年「株式会社政策工房」設立。政府の規制改革推進会議委員、国家戦略特区ワーキンググループ座長代理などを務める。著書に『岩盤規制 ~誰が成長を阻むのか』(新潮新書)など。


編集部より:この記事は原英史氏がFacebookに投稿された毎日新聞に対する抗議文をベースに作成されました。 原氏に賛同し、他にも掲載されているメディアもあります。記事が拡散され、アゴラでも関連の意見が投稿されるなど社会的な議論が広がりつつあります。