党首討論など

石破 茂 です。
19日水曜日に行なわれた党首討論では、いつものことながら野党の拙劣な質問振りが目立つ展開となりました。

衆参インターネット中継より:編集部

枝野氏、玉木氏、志位氏は解散に言及することもなく、「解散されて議席を減らすのが怖い」「本気で政権を獲る気がない」という野党の思惑が国民に見透かされてしまう結果となった1時間でした。

この短い時間で何を国民に印象付けるか、という戦略設定が全くないままに的を絞らないで総理に質問して、持論を述べてもほとんど意味はありません。短い質疑時間に具体的な政策論に踏み込んではならないのです。

党首討論のみならず、過去の予算委員会などのやり取りを精緻に検証し、相手の答弁手法を徹底的に研究して周到に準備した上で討論に臨んでいるとは到底思えず、秀才である(と思われる)野党党首の皆様が学習能力を磨かれることを望みます。

野党の能力が低ければ政府・与党にも驕りや緩みが生じ、国会の形骸化と政治の劣化が進んでしまうことを強く危惧します。政治が劣化するのは政治家や政党の自業自得ですが、それに国家国民が巻き添えになるようなことがあってはなりません。

国会質疑や記者会見の場は、政府が国民に政策や方針を説明し、理解を得る格好の機会ですし、本来最大限に活用すべきものです。

かつて自衛隊をイラクに派遣した際は、防衛庁(当時)内で記者会見の模擬演習を何度か行ったものでした。日頃、記者諸兄姉からの厳しい質問に対応している若手の官僚たちが質問する側に回って、長官の私に厳しい質問を浴びせかけるという誠にスリリングな設定でしたが、これがその後の国会答弁や記者会見にとても役立ちました。

政府やこれを構成する総理、閣僚、政府職員はあくまで国民全ての「公共財」なのであり、その特性として非排除性を有しています。「相対多数の人に支持されればそれでよい」「とにかくその場を凌げばよい」ということにはなりません。かつて先輩から教わった「予算案や対決法案で野党に賛成してもらうことは出来なくとも、政府・与党の考えを理解・納得はしてもらえるよう努力せよ」との自民党の心得を、今更ながら思い出します。

今週のコメント欄にお寄せいただいた「今回の金融ワーキンググループの報告書を受け取らない、無かったことにするとの政府・自民党の対応は、昭和16年(1941年)夏に総力戦研究所が作成したレポートを握り潰した当時の帝国政府を想起させる」とのご指摘にはハッとさせられました。

昭和15年2月に「反軍演説」を行った斉藤隆夫衆院議員の衆議院除名、同年の官民挙げての皇紀2600年奉祝ムード、そして総力研究所の報告書握り潰しが、今とどこか重なって見える思いをしておられる方が居られることをよく認識させられたことでした(斉藤隆夫代議士の「反軍」演説については以前も述べましたが、インターネットで演説の録音を聞くことが出来ます。内容が「反軍」では全くないことがわかりますが、同議員の衆議院除名に反対したのは僅か7名でした。この演説が今なお衆議院速記録から削除されたままなのはどうにも解せません。総力戦研究所についても以前からご紹介してはおりますが、文春文庫の猪瀬直樹著『昭和16年夏の敗戦 日本人はなぜ戦争をしたか』を是非お読みください)。

昨日21日の自民党憲法改正推進本部は「憲法裁判・司法制度の現状と課題」と題する宍戸常寿東大教授の講演と質疑応答でした。私もいくつか質問したのですが、憲法の何処にも明文で規定されていない「統治行為」概念を排すべき、との所論には共感するところ大でしたし、「臨時国会召集は統治行為か」との、現在裁判で争われている論点についても有意義な議論を交わすことが出来ました。

現在議席を有している自民党議員の多くは平成24年(2012年)自民党憲法改正草案の作成に関わっていないので、知らない人も多いのでしょうが、同改正草案においては「衆参いずれかの四分の一の議員の要求があったときは内閣は20日以内に臨時国会の召集を決定しなくてはならない」旨を明確に定めています。党利党略に捉われることなく、現行憲法第53条の趣旨を明確にする意味でとても重要な改正案文だと思います。

かつて「歯と唇の関係」「血盟同盟」とも称された中朝同盟の本質は今も変わらないのか、というテーマをここ数年、中国の関係者と議論する際にはいつも提起してきたのですが、明確な回答が得られたことはありませんでした。その意味で今回の習近平中国国家主席の14年ぶりの北朝鮮訪問には強い関心を持っています。次回以降改めて論じることに致します。

新潟県村上市を中心とする地震で被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。防災省設置の必要性を改めて思います。

週末は、22日土曜日は岩手県議会議員選挙立候補予定者高橋こうすけ氏の応援集会に出席(盛岡市内各所・高橋氏は岩手一区支部長の高橋ひなこ代議士の御子息で、私の事務所で秘書を務めてくれた人物です)。

23日日曜日は自民党稲美支部政経セミナーで講演(午後3時半・兵庫県加古郡稲美町文化会館)、自民党播磨町支部懇談会(午後5時・加古川市内)、自民党高砂市支部政経セミナーで講演(午後6時半・高砂市福祉保健センター)という日程です。

ここのところ不順な天候と長時間の陸路移動が多かったせいか、ベストとは言えない体調が続いています。参議院選挙も間近、体調管理に気を付けなくてはいけませんね。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。


編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2019年6月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。