is your money smiling?あなたのお金は微笑んでいますか

Photos by K.Bito

日本でヒットして世界中で読まれている本はたくさんある。しかし、日本で人気が出て翻訳されて読まれるようになったものが多い。

最近、米国で話題になっている本がある。「happy money」(米国サイモン&シュスター社)。著者は、作家の本田健さん。日本人の著書で最初に英語で書き下ろされた作品は、新渡戸稲造の「武士道(BUSHIDO, THE SOUL OF JAPAN)」以来になる。

なぜ、「happy money」が画期的なのか

「happy money」は、2019年6月13日発表の、USA TODAY Best-Selling Books(米国ベストセラー)の“75位にランクイン”。全米ランクであることから、注目を浴びている。

本書の主題は「お金のEQ」である。私はEQの専門家でもあるが、この解釈は間違っていない。本田さんは、お金には「Happy Money」「Unhappy Money」の2種類があるという。「Happy Money」は、10歳の男の子が母の日に、お母さんに花を買うようなお金のこと。子どもの幸せのために両親がコツコツためたお金も「Happy Money」である。

つまり、愛情や思いやり、友情を伴って流通しているお金は「Happy Money」と定義できる。一方、「Unhappy Money」は、家賃や請求書、税金など渋々払うお金のこと。不満や怒り、悲しみ、失望を伴って流通しているお金はどれも「Unhappy Money」になる。

人の行動は全て感情(EQ)が影響する。よい感情であれば、適切な行動を取ることができるが、悪い感情を抱いては適切な行動を取ることは難しい。

では、感情に対して大きな影響を与えるものはなにか。私は「お金」ではないかと思う。EQが高く人物的に素晴らしいAさんをある会社が採用したと仮定する。Aさんが安定的にパフォーマンスを発揮するにはなにが必要か?それは「Happy Money」の存在である。

素晴らしい能力をもっていても、お金の不安に苛まされていたらパフォーマンスを発揮することはできない。嫌な上司の存在もパフォーマンスに影響を及ぼすが、そこに金銭的な呪縛が無ければ打ち手(例:退職、転職、起業など)は考えやすいものである。

人の人生は否応なくお金によって影響を受けている。「happy money」は、EQ理論の延長線上にある。お金のEQが低ければ、人生を楽しむ心の余裕が持てない。どれだけお金を稼いでも、ためても、安心することができなくなる。お金を使って人生を豊かにすることができなければ、お金には何の意味すらないと、本田さんは警鐘を鳴らす。

MEQ(Emotional Money Quotient)の展開

オレゴン州ポートランドのKATU-TV出演時の本田健氏

その後、EQ理論は衰退していった。残念なことに、EQブーム後に出現したサービスには、理論を無視した稚拙なものが少なくなかった。あえて“何か”は指摘しない。

私の解釈になるが、「Happy Money」は「MEQ」(Money Emotional Quotient)として定義することができる。なぜならば、お金に影響を受けない人はいないからである。「MEQ」を測定するサーベイなどがあれば展開の幅が広がるように思う。

EQがなぜ日本でブームになったのか。それは数値化(スコア化)したからである。米国では人材育成にEQを利用していたが、数値化することはなかった。日本人が占い好きな点を鑑みれば、EQの数値化に合理的な理由を見出すことは難しくない。

あなたの人生の「Mission DO」はなにか?あなたの「Happy Money」はなにか?あなたも、この機会にじっくり考えてみてはいかがだろうか。(※日本語版「happy money」は7月20日にフォレスト出版から上梓予定)

[本書の評価]★★★★★(91点)

【評価のレべリング】※標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★  「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★   「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★    「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
星無し  「レベル0!読むに値しない本」50点未満
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尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※6月6日に14冊目の著書『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)を出版しました。