G1新世代リーダー(U40)サミット
「日本を良くする社会変革~欧米の社会的断絶から学ぶ〜」
というセッションに登壇をさせていただきました。
米国のトランプ現象、英国のBREXIT、フランスのイエローベスト運動等、欧米諸国における社会の断絶が止まらない現状がある中、欧米の社会的断絶はなぜ起こったのか、また日本で起こさないためには何をするべきかということが主なテーマです。
ハーバード大学の理論物理学者を経て、楽天の常務CDO(Chief Data Officer)としてWell-beingの理解を深め、AIとデータによる産業革命に取り組む北川拓也さん、
イェール大学の経済学者でデータやAIを用いた因果推論を専門として人間の行動の未来を研究する 成田 悠輔さん、
アジア諸国の人権問題を直視し、「子どもが売られない世界」の実現に向けて行動を続けるNPOかものはしプロジェクトの村田 早耶香さん、
NPO法人Mielka、選挙情報可視化サイトJAPAN
CHOICE等、政治や選挙の見える化に取り組んできた弁護士・徐 東輝さん
と共にお話をさせて頂きましたが、皆様それぞれの知見が深く、インプットもアウトプットも私的には大変実りのある時間となりました。
またオーディエンスも、日本・世界の次世代を担うリーダー達ということで質問や提言も鋭く的確な意見が多く、とても参考になりました。
下記に、私がお話しさせて頂いた内容の要旨を掲載させて頂きますので、ご興味のある方はよかったらご高覧ください。
欧米の社会的断絶について、それぞれ着目している点とその理由
欧米の社会的断絶についての所感
ブレグジッドも、イエローベスト運動も、トランプ現状も共通して言えることは、既存の体制や制度の不備、変更などに対して、市民が潜在的に持っていた不満が爆発したことによって起こった
反既存勢力、反既得権益、反グローバリゼーション、反移民、反エスタブリッシュメントなどを旗印に集結している。
ただそれは合理性と長期的な展望を持って動いているようなものではなく、非常に情緒的に感情的に動いているように感じている。
「多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」というカエサルの言葉があるが、エスタブリッシュメントも市民もお互いの環境に対する共感力や想像力が欠如している。その結果、社会的断絶が起こっていると感じている。
政治を感情動員ゲーム化する煽動者たちと社会分断
それに加えて、情報を受発信するメディア・プラットフォームが多様化する中、煽動者によるフェイクニュースの発信が日常化されるようになり、市民には情報リテラシーが求められるようになった。
しかしながら多くの人々は、自分の専門外の情報に対して、数多ある情報をファクトチェックすることなく、そのまま鵜呑みにする傾向が強くなり、ポピュリズムと反知性主義が蔓延することとなった。
結果として、政党そしてその支援者の中には、中道思想を持つ者が減少し、無党派層は投票行動を起こさなくなり、イデオロギー闘争が極端になった。
保守、リベラルというより、極右と極左によるポピュリズムの煽り合い。
反エスタブリッシュメント政党の魅力は、既存政治を批判する歯切れの良さであるが、政権を担当した後に理想と現実のギャップを埋められず衰退する。
キーワード的に言えば、中抜けしている時代。
中間層、中間組織、中間団体、中道思想など、バランスをとっていた者が抜け落ちている時代。
しかしこの結果は、既存の支配層が、男性優位的、権威主義、年長者への服従要求、男女平等、個人の自由な選択に抑制的な運営を行ってきた結果、中間組織に加入する者が激減したことによるものと反省する必要がある。
日本でも同様の社会的断絶が起こりうるのか(あるいはすでに起きているのか)、それを防ぐ(解決する)手段とは
数多の格差により社会は分断されている
所得格差、教育格差、情報格差、貧困の世代間連鎖、言えばきりがないほどの格差により、日本社会も分断されている。
世帯所得が歴史的低下を続け、働いても食えない、貯蓄できない。
そんな社会に広がるのは、転落におびえる中間層の叫び。
中間層がどんどん疲弊をし、貧困層への転落を恐れている。
所得、世代、地域、性別など社会のいたるところに入った無数の分断線を埋めるにはどうしたらいいのか、社会が全体として考えなくてはならない。
例えば、親の貧困が一要因として道を逸れ、教育を十分に受けられず、低学力・低学歴になった結果、就労状況が不安定になり、生きていくためのお金を稼ぐことが困難となる子どもたちがいる。
生きていけない環境だからこそ、現状に反発する。
行き過ぎた反発は、犯罪などに繋がり、社会の基本的なレールから排除された若者たちを私は幾人も見てきた。
私もその当事者の一人たが、そんな負の連鎖が繰り返された末路として、格差が固定化し、その子どもたちが、大人になった時にまた経済的貧困に陥るという貧困の世代間連鎖は、大きな社会問題だと考えている。
人種差別のように何かを排除する論理で政策を前に進めてしまったり、蓋をして見えなくするだけで、こうした問題に無関心で放置してしまうとその不満がどこかで必ず爆発する。
このような貧困の連鎖と固定化を放置する社会に、持続的な発展はありえないので、こうした課題に目を向けて抜本的な解決を図ることが求められている。
弱い者がさらに弱い者を叩く
また要因の一つには、「人生に対する満足度が非常に低い」ことがある。
「自分は不幸だ」という感覚は、教育や仕事、収入の水準と密接に関連している。
比較的大きな不満を抱えているのは、低・中所得の境界に当たる人たち。
失業者ではなく、生活保護を受けるほど低所得でもなく、社会保障制度の恩恵を受けることがない人々。
この前、地域の中で、年金を減らされて生活に困っていたおばあさんから声をかけていただいた時に、「年金を減らされたら生活していくのが、本当に大変。生活保護の人たちは真面目に年金を納めていた自分たちよりお金をもらっているなんてズルイ」という趣旨の話を伺いました。私が直感的に感じたのは、この状態は悪循環でマズイなと思いました。
本来であれば、年金を減らすという予算の分配を決定した政府に怒りの矛先が向けて、年金カットするのはおかしいと声を挙げるのが筋だと思う。
しかしながら、この事例のように、同様に生活をすることが困難な方々と比較して、「隣の芝は青い」という議論がしばしば聞かれる。ただこれでは根本的な解決が図られず、現状は何も変わりません。
THE BLUE HEARTSのTRAIN-TRAINという楽曲の歌詞に出てくるフレーズに、『弱い者達が夕暮れ さらに弱い者をたたく』という言葉がある、まさにこうした状況が起こり得る危険性があることを肌で感じる中、一人ひとりが政治に目を向けることの重要性を伝えていく必要を感じている。
働く環境によっても格差が固定化されている。
正社員と非正規社員別に、初めて就いた仕事の雇用形態での女性の結婚や出産に関する影響を見ると、正社員で結婚している割合(配偶者あり)が70.9%、子どもがいる割合が54.1%であるのに対して、非正規社員で結婚している割合(配偶者あり)が26.9%、子どもがいる割合が21.6%であり、2.5倍以上の差がある。
また、男性の結婚しているかの有無を正社員、非正規社員、パート・アルバイト別に見ると、20~24歳では雇用形態にかかわらず90%以上が未婚であるのに対して、35~39歳になると正社員の72.4%が結婚しているのにも関わらず、非正規社員は29.9%、パートは23.8%、アルバイトは23.3%しか結婚していない。
日本では残念ながら、働いている環境の違いが結婚や出産など、人生に大きな影響を及ぼす現状がある。しかしこうした状況は、結果として国力を弱くし、社会を不安定化させる。
労働人口5459万人中、非正規社員は2036万人(37.3%)であり、2012年から現在を比較すると220万人も非正規労働者が増えていることから、結果としてこの状態が続けば、少子化に歯止めがかからない。
その証左として、2017年に生まれた子どもの数は94万6060人、合計特殊出生率は1.43となり、過去最少を更新している。
そして、少子化の影響は、経済、社会保障、国民生活に広範な悪影響を与えることは言うまでもない
経営者・労働者、共にヴィジョンを描けていない状況では、双方でミスリードが起こる。
デロイトトーマツグループ実施の調査によれば、日本の経営陣幹部は、高齢化や働き方改革を背景に、会社と従業員との関係が契約による一時的、臨時的な雇用に変わる方向にあると見ており、調査対象国で最も多い85%がそう考えていると回答した。(全世界の61%)
また、75%以上がロボットなどの自律的なテクノロジーが人に代わる未来を予測している。
その一方で、人材採用・育成については、他のテーマの後回しにされ、日本人経営幹部の中で、この一年間で頻繁に議論をしたテーマの一つだと答えた人は、なんと2%という非常に低水準で留まった。
また、最新テクノロジーの活用については、専ら従業員の効率性向上での関心が向けられており、自分たちの組織として「高い能力がある」とした回答者が78%にのぼりましたが、技術主導型の変化が「組織構造」と「従業員」に及ぼす影響について、計画し対処できると考えている経営幹部はわずか3%であり、テクノロジーで業務を効率化したいと思っているけれど、「労働力の変化」に注目した本質的な議論は、尽くされていないということが浮き彫りとなっている。
テクノロジーの進化は本来、労働の効率化につながり、その結果、生産性を大きく向上させることで、人々の生活を豊かにし、より良い未来を切り開くためにあるものであると信じている。
しかしながら、現在のように「経営者」・「労働者」共にヴィジョンを描けていない状況では、双方共にミスリードが起こり、イギリスの産業革命時代に起こった機械の浸透が仕事を奪うのではないかと恐れを抱いた労働者が機械などを破壊した「機械の打ち壊し運動」のような哀しい歴史を繰り返すことになるのではないかと大変危惧している。
だからこそ、テクノロジーの進化よる「職」の変化に対応した「人材育成」や「職業訓練」。その時代に対応した「労働市場の開拓」と「適切な人材配置」。そして効率化によって生まれた余剰時間を「給与」や「休暇」という形で労働者に還元するという本来あるべき姿をしっかりと思考し、「経営者」・「株主」など、民間企業のマネジメント層への意識の改革を促すことで、より良い方向に時代の歩を進めて行かなければならない。
社会的断絶は、そもそも悪なのか。あるいは断絶のない社会はあり得るのか
社会的断絶は存在するが、突き詰めればやはり悪。
私の人生においての目標は、
「すべての生きる人にとって豊かで平和な社会を創る」こと。端的に言えば、「世界平和」の実現。
そうした世界を本気で実現するために必要なことは、
「生きる人すべてが平和について考え、互いの違いに愛情を持って触れ合い、尊厳ある生を尊重こと」だと考えている。
断絶、分断からは争いや差別が生まれる。
人が人として生きるために持っている”あたりまえ”の権利が蔑ろにされる社会は社会として持続しない。
「夢が持てない貧困層の子どもたち」
「過激な宗教間の排他的差別と迫害」
「民主化蜂起をした僧侶たちの弾圧 」
「安全を求めた末に浜辺に打ち上げられた幼児の難民」
「国家による戦争犯罪・権力の暴走」
「脅威にさらされるメディアの自由」
「紛争地における障がい者の孤立、置き去り」
「トランスジェンダーの権利」
こうした社会の問題に怒り、憂いて、行動し、真正面から課題解決に取り組み、世界中の人に尊厳ある生が必要。
ただ多様性を唱える者で自分自身のマイノリティ至上主義に陥っている例を見ることがある。
多様性は、それぞれのマイノリティ至上主義ではないので、多様な価値観を共に尊重し、理解しあえる、ダイバーシティの形成を各自が意識することも極めて重要。
今後日本が悲劇的な断絶を生み出さないために、できること
多くのエスタブリッシュメント層は貧困層にいた経験がない。
私は、自分自身が母子世帯の貧困家庭で育った原体験から、世の中の「貧困」 と「暴力」を根絶したい。 そして「平和」で「豊かな」社会がいつもいつまでも続く世の中を創りたい。そんな想いで政治の道を志した。
父と母は私が、小学生のときに離婚をした。
母は、私と妹二人、兄妹三人をなんとか養おうと早朝から深夜まで働いてくれたが、働いても働いても生活は厳しくなるばかり。
ひとり親家庭のお母さんたちは 81.8%の人が働いているにも関わらず、平均収入は約 200 万円に過ぎない。
そしてひとり親世帯の相対的貧困率は 50.8%に達する。
この状態は本人の努力が足りないのではなく、多数のひとり親家庭のお父さん、お母さんが必死に働いてもワーキングプア、 貧困状態に陥るという社会的な構造に欠陥があることの証左である。
そして働き続けた母は、ある時期に身体を壊し、寝込むようになった。
そしてうちは、生活保護を受けることとなった。
その時、子どもだった私は、ただ無力で、そのことに悔しさを感じながらも、 母の代わりに働きに出て、家計を支える力はなかった。
多くのエスタブリッシュメント層は貧困層にいた経験がない。
結果として社会的弱者に対する共感力、市民生活に対する想像力が欠如しているからこそ、その自覚を持って、相手の環境、境遇を極力理解、体感し、その人々の視点を踏まえた行動が人の上に立つ者には求められている。
民主主義国家では、民度以上の政治は生まれない。
政治家に不満があるとしたら、その政治家を選んでいるのは私たち。
政治に不満があるとしたら、その状態を作っているのは私たちが選んだ政治家。政治を変えるには、私たち国民一人ひとりが政治に向き合うことがやはり必要。
市民の皆様の中には、政治には何を言っても変わらないと思っている方がいらっしゃるように感じる。私もそうした若者の一人でした。しかし私が政界に入って実感したのは、何を言っても変わらないのではなく、何も言わないから変わらないという現実だった。
そして、私たちは、“政治に「無関心」でいることはできても、「無関係」でいることはできない。“我々の誰もが、この事実から逃れることはできません。
株価、為替、年金や給料の額、医療・福祉の体制、保育園の数、満員電車の緩和、教育のカリキュラムや学費、婚姻制度のあり方、など、日々の生活を送る上でほぼ全ての事象に関して政治と生活は密接に絡み合う。
だからこそ、おかしいと思うことがあれば、おかしいという声を挙げ、その事象を正す行動を起こすことがそれぞれに求められている。
世の中をより良くするためには、私たち一人ひとりが社会の“一隅を照らす”ことが大切。
国民一人ひとりが自分の見える範囲の社会の問題点に対して、できる限りの改善を行う。
仮に、この世に生きる全ての人が、それぞれのフィールドに応じた社会の問題点を真剣に考え、それを解決するためにアプローチが実行できる社会が形成されれば、皆が理想とする世の中を実現することが可能となる。
「現状に屈するのか、未来を拓くのか。全ては、私たち一人ひとりの行動が未来を決める」
皆様と共により良い社会を切り拓く行動を積み重ねていきたいと思うし、私も、国民の想いを政界に届ける代弁者として、しっかりと働きたい。
中谷 一馬 衆議院議員 立憲民主党
1983年生まれ。横浜市出身。IT企業「gumi」(現在、東証1部上場)創業参画を経て、2011年神奈川県議選(横浜市港北区)で民主党から出馬し初当選。2度目の国政選挑戦となった2017年10月の衆院選は立憲民主党推薦で神奈川7区から出馬、比例復活で初当選した。公式サイト
編集部より:この記事は衆議院議員、中谷一馬氏(立憲民主党、比例南関東)のブログ2019年6月23日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は中谷一馬オフィシャルブログをご覧ください。