日本旅行の内々定誤送信。不幸中の幸いではないか?

尾藤 克之

photo-ac.com

日本旅行が、採用活動に応募した4万人を超える学生に対して、内々定の通知を誤って送信したことがニュースになっている。

採用活動に応募した4万人を超える学生に対して、担当者が誤って内々定の通知をメールで送信したとされている。

どの会社の就職ナビを使用していたかわからないが、就職ナビはかなり細かく設定ができるようになっている。

たとえば、100名定員の会社説明を開催するとしよう。有名大の学生以外に参加させたくなければ、希望する大学以外の学生がエントリーできないように設定することが可能である。

ところが、これをやり過ぎると、5ちゃんのような匿名掲示板などに書かれてしまう。消費財メーカーだと企業のイメージダウンにつながる。このような場合には、有名大の学生90%、それ以外の学生10%程度にしておけば、それ以外の学生もエントリーできることから多少のカムフラージュが可能になる。

人気企業でなくても上場企業であればエントリーが殺到する。採用数に関わらず、人事担当者は数名が一般的だろう。仮に2名として1万人のエントリーシートを読むのにどの程度の時間がかかるのだろうか。1万人のESを採点するには41日かかる。1ヶ月の稼動を20日とするなら、2ヶ月はかかる勘定になる。結局は大学名でスクリーニングせざるをえない。

ところが、学生は大切なお客様だから、学歴差別が存在することを公にはできない。自社の商品を買っていただけるお客様に失礼な対応はできないからである。仮に落ちたとしても、ネガティブな印象を持つことなくフェーズアウトしてもらう必要性がある。

ある人気企業A社での出来事になる。合否通知を送信する際、システム負荷がかかりフリーズしてしまった。ページの送信ボタンを押しても送信済み表示にならない。担当者は何回もクリックした。結果的に、不合格通知が1人に何通も届いていた。

その日の夜に匿名掲示板が炎上した。「お祈りメールは1通でわかる。なんで何通も届くのか。嫌がらせか。そんなに僕はダメだったのか。ヒドい!」。同様の書き込みがされていく。数日炎上したのち沈静化したが、ダメージは大きかったのではないかと思う。

今回の、日本旅行の件は、エントリーの挨拶メールを送るところを、操作を誤ってしまったものと思われる。採用が進んだ時期でなかったことが不幸中の幸いであろう。しっかりケアをすれば、採用活動全体にそれほどの影響はないはずである。採用担当者は非常にいい経験をしたのではないかと思う。リカバリーのチャンス到来である!

さて、今月、14冊目となる『3行で人を動かす文章術』を上梓した。ESをはじめ、正しい文章を書きたい人には役立つのではないかと思う。

尾藤克之(コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員)