IECは6月にAALに関するシステム標準化会議を開催した。AALは日本語では自立生活支援技術。たとえば、生体モニタを装着して一人で生活する高齢者に脈拍の乱れなどがあれば医療関係者が助けに来る、というのが利用イメージである。
標準化会議に並行して、PRも兼ねて公開カンファレンスが開催された。
AGE Platform EuropeのGanzarain氏は、AALを実用化するためには高齢者の要望を考慮に入れる必要があると強調した。せっかく開発した技術も、理解できないという理由で使用されなければ、宝の持ち腐れになるからだ。
ところが、高齢者がどんな要望を持っているかについての研究は少ない。増してや65歳と80歳でどう異なるかの分析は不足しており、研究を進める必要があるそうだ。
オーストリア研究振興機構のGeyer氏は、欧州におけるAALプログラムの全貌について発表した。この欧州プログラムは2020年までに7億ユーロ(800億円)以上の研究資金を供給し、多くのプロジェクトを支援してきた。その結果25%を超えるプロジェクトで成果に市場可能性があると判断された。2020年以降にも新たな資金を供給する計画があり、間もなく発表されるという。
オーストリア技術研究所Stainer-Hochgatterer氏は、AALを使用する際に高齢者がどんな困難を経験するかを調査したそうだ。調査によって、高齢者は新しい技術に関心が高く、想像以上に多くがインターネット・スマートフォン・タブレットにアクセスできることが明らかになった。また、多数のセンサを使用して家庭環境で個人の生活をモニタすることも、生活の安全を向上させるという点で歓迎されている。これは、20〜30歳の若者が私生活の技術的なモニタに対してはるかに批判的なのと対照的であった。
このほか、ドイツ等各国のAALプロジェクトについての発表もあった。各国ともに、複数のプロジェクトに研究資金が投下されている。その結果、各国横断的に眺めると、類似の目的を持つプロジェクトが並行して進められている。欧州域内の利害関係者間でより緊密に協力と調整を進めれば、相乗効果をより高めることができるだろう。
欧州域外からは日本(山田肇)が唯一、AALが高齢者の生活の質を向上させる可能性について発表した。
全体を通じて、欧州諸国における急激な人口動態変化は社会に多くの課題をもたらしていること、AAL技術は、モバイルを駆使することによって、在宅環境でも出先でも高齢者を支援する中心的な解決策になること、などが示された。