吉祥寺は「本当に」みんなが住みたい街ナンバーワンなのか?

内藤 忍

日本経済新聞の記事によれば、2019年4月に長谷工アーベストが3166件のインターネット上の調査を行ったところ、首都圏「住みたい街(駅)」ランキングの1位は、吉祥寺。2004年の調査開始以来、15回連続でトップです(図表も同紙から)。

2位以下は、横浜、大宮、新宿、池袋と続いています。大宮は昨年の13位から3位へと大幅に順位を上げているのが目を引きます。また、中野や立川がベスト10入りし、船橋、海老名、藤沢などが、20位圏外からランクインしています。

リストを見て思ったのは「これは本当に住みたい街なのだろうか?」という素朴な疑問です。

どこに住みたいかというのは、個人差が大きいと思います。自分の実家や生まれ育った場所には愛着がありますし、勤務先のオフィスに近いところに住みたいといったニーズもあると思います。

この20の駅名を見ると、新宿・池袋・品川といった東京都心部のターミナル駅と中野・立川・船橋・藤沢といった郊外の知名度の高い駅が多いことに気が付きます。

その中でいつも不思議に思うのは、吉祥寺の人気です。

チョコクロ/写真AC(編集部)

確かに、井の頭公園があって環境も良く、井の頭線とJR中央線が使えるターミナル駅です。しかし、JR中央線各駅停車は隣の三鷹駅始発ですし、井の頭線は都心のメトロへの相互乗り入れもしておらず、渋谷駅では東急への不便な乗り換えで、ホームは大混雑しています。都心までの距離も結構ありますから、便利な街とは必ずしも言えません。しかも、東京23区ではなく武蔵野市というのも、私にはネガティブな要素です。

逆に、多くの人が憧れるような、中目黒、三軒茶屋、恵比寿、下北沢、麻布十番、白金台、表参道といった駅はランキングに入っていないのは意外です。

不動産投資をしている視点からは、ランクインしている駅よりも、このようなランクインしていない駅の方が、住みたい街として人気が高いと感じます。例えば、大宮や船橋に不動産投資するより、中目黒や恵比寿に物件を保有する方が、安心感があります。実際に家賃水準や空室率を見ても、その傾向は確認できるはずです。

もし、大宮と表参道のどっちに住みたいか?と聞かれたら、現実的な家賃水準などを考えなければ、表参道に住みたいと回答する人の方が多い気がします。

そう考えると、今回発表された調査結果は、正確に言うと「住みたい街」ではなく、「知っている有名な駅の中で、現実的に住めそうな街」というのが正確なところではないかと思います。

個人的にも今回のベスト20の中で積極的に住みたい街と言える駅は、残念ながら1つもありませんでした(住んでいる方、失礼を申し訳ありません)。それしても、この調査の目的は、果たして何なのでしょうか?

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年7月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。