昨年、徴用工賠償判決、慰安婦合意破棄、レーダー照射等により韓日関係が悪化したが、日本を訪れた韓国人は750万人に達し、過去最多を記録した。日韓貿易も日韓関係が悪化するのと裏腹に増加する傾向である。
韓国の歴代大統領は支持率が落ちると必ず反日扇動に傾く。だが、本音は親日という点でも共通している。
金泳三氏は旧総督府の建物を撤去したが、日帝時代の恩師の子孫を青瓦台(大統領府)に招待して恩返しした。文在寅氏も反日扇動をしているが、夫人は釜山の茶道学校に通い、娘は日本留学をした。
今、韓国では「金泳三は“日本の悪い癖を直さなければ”と妄言して IMF金融危機を招いたが、文在寅は慰安婦合意破棄、徴用工賠償判決で経済危機を招き、国民だけ被害を受けるだろう」という世論が広がりつつある。
もともと、徴用工問題は1965年、日韓国交正常化を妨害しようと朝鮮大学の朴慶植教授が書いた『朝鮮人強制連行の記録』がテキストになり、強制徴用、無賃奴隷労働と、事実が歪曲されてしまった。
まず、朝鮮人徴用工という名称が間違っている。
その多くは1939年から大卒者3倍の給料を得ようと,募集・斡旋に志願した人たちだ。実際の徴用は44年9月~45年4月まで8カ月間だったが、給料は日本人と同じ金額が支給された。当時の炭鉱労働者の証言や日記には、飲み過ぎて泥酔したり、花札に興じたり慰安所に出入りしたことが記録されている。
今回、日本の輸出規制強化の原因は、文在寅政権の反日路線と文政権の顔色をうかがう司法府の徴用工賠償判決が火種となった。
1965年の国交正常化に際し、日本は無償3億㌦、有償2億㌦、民間借款3億㌦、合計8億㌦の経済協力資金を韓国に支援。韓日請求権交渉で、日本が請求権を放棄して韓国に残した財産22億㌦を含めると、韓国は30億㌦を受け取った計算になる。この資金等の協力が韓国経済成長の肥やしになって貧困を卒業できたわけだ。
さらに、個人請求権は韓国政府が負担することで合意し、朴正煕政権時2回(1975年、77年)、盧武鉉政権時2回(2005年、07年)、“徴用工補償”が行われた。
従って韓国司法府の賠償判決は、国際法と国際常識に反する無理筋といえる。日本が経済制裁を加えた理由には、安全保障上の理由も大きい。
日本の輸出規制品目である半導体やディスプレイの3素材(フッ化ポリイミド、レジスト、エッチングガス=フッ化水素)のうち、エッチングガスは化学兵器の原料だからだ。この剤は一時、韓国に大量輸出されたが、北朝鮮に流出した疑いもある。日本が輸出規制を本格施行すると、サムスン電子の生産ラインは停止せざるを得ない。
サムスン電子の株式の57%以上が外国人投資であるため、米国も投資損失を被る。韓国経済は致命傷を負うおそれがある。
韓国の携帯電話、精密部品を含む自動車、造船、鉄鋼、重化学製品、生産設備の国産化率は20%に過ぎず、80%が日本製の精密部品、機械、設備、生産ラインだ。
日韓関係の悪化は、中国と北朝鮮が望むものである。韓米日三角安保協力が崩れると、東アジアの勢力均衡に亀裂が生じ、結局、地域の平和・安全保障秩序が破壊される恐れがある。
オバマ氏は2014年に韓米日首脳会議を手配し、2015年、韓日慰安婦合意の調整役を果たした。米国は、韓国の安保を左右する同盟国で、日本は韓国経済の存亡を左右する友好国だ。韓国は虚勢を張らずに米国に仲裁を要請し、日本に協力を要請しなければ、存亡の危機に直面することになろう。
(拓殖大学主任研究員・韓国統一振興院専任教授、元国防省専門委員、分析官歴任)
※本稿は『世界日報』(7月10日)に掲載したコラムに筆者が加筆したものです。
【おしらせ】高永喆さんの著書『金正恩が脱北する日』(扶桑社新書)、好評発売中です。