来年1月の台湾総統選に向けた党公認候補を決める予備選で、野党国民党における予備選挙が電話による世論調査で行われ、高雄市長の韓国瑜(62)が44.8%で勝利した。ライバルと言われた鴻海創業者の郭台銘が27.7%、前回の総統選挙にも出馬した朱立倫が17.95%、前台北県長、周錫瑋が6.0%、孫文学校校長、張亞中が3.5%と予想以上の大差となった。
ただし、郭台銘は第三の候補として立候補する可能性を否定していない。また、台北市長の柯文哲が立候補するという噂もある。
台湾の予備戦は電話での世論調査で決まる。先に行われた民進党予備選では携帯と半々とされ、若い世代に人気がある蔡英文に有利に働いた。
国民党でも郭台銘は携帯を含めるように主張したが、残りの4人が反対した。
ちょうど私は先週、台湾に出張していたのだが、各陣営では無作為にかかってくる電話に出られるように、自宅の電話の前で待機するように呼びかけていた。
もともと、経済の不調で蔡英文主席の人気は落ちて、国民党の勝利が有力視されていたのだが、最近では、香港での犯罪人引渡法反対ムードが大きく影響して蔡英文の人気が回復している。
最新の世論調査では、蔡英文と韓国瑜の対決の場合には、蔡英文の支持率がかなり上回ると出ている。
なお、韓国瑜の考え方については、デイリー新潮に掲載されている『台湾「蔡英文」が最も恐れる男「国民党の反日的言動は支持しない!」』がもっとも分かりやすい。
台湾生まれだが外省人であり、ひとつの中国原則を確認した「92年合意」を守ると明言していることが蔡英文とは大きな違いである。子どもの頃は、日本人を嫌っていたが、大人になって日本文化と日本人に触れて考えを変え、夫人が経営する私立学校では、日本語も教えているとし、台湾には、米国文化、中華文化、日本文化が入っており、台湾はこの3つの文化と経済力を吸収して健康に強く育った「子供」であり、対立は望まないと行っている。
高雄の市長としては、現実的な経済政策で評判はまずまずのようだ。
八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授