「007が黒人女性」報道に「時代に忖度しすぎ」「ポリコレ」の声

アゴラ編集部

世界的な人気スパイ映画「007」シリーズの最新作(2020年公開予定)で、次期007が黒人女性の設定になるという英国メディアの報道が世界中の映画ファンに衝撃を与えている。日本国内のネット世論も敏感に反応し、批判や懐疑の声が目立つ。

過去6人のボンド役は全て白人男性俳優(編集部撮影)

1962年から製作されてきたシリーズでは、主人公の「007」こと英国情報部員、ジェームズ・ボンド役はショーン・コネリーや故ロジャー・ムーアら6人の白人男性俳優が全て演じてきた。2006年から4作品でボンドに起用されたダニエル・クレイグは新作で勇退するが、デイリーメールなどの英国メディアは、ストーリー上でもボンドがジャマイカで隠遁生活を送っており、黒人女優のラシャーナ・リンチが演じる新しい「007」がボンドを迎えに行く設定だと報じている。

ラシャーナ・リンチ(Wikipedia)

この報道に日本国内のネット上もざわつき、ヤフーニュースのコメント欄(ヤフコメ)では、

「時代」に忖度しすぎ。「007」の根底にある設定を覆してしまう。
黒人の女性がスパイを演じる別作品を作ればよい話で、「007」の看板を使うべきではない。

黒人の俳優を使うのが最近のハリウッドの傾向だと思うが、こういうふうに無理に起用するよりもっと合った作品を作ればいいだけだと思うけどな。こういうやり方はプラスよりマイナスの影響の方が多くなると思いますよ。

などと否定的なコメントが続出。ツイッターでも、

次の007、主演が黒人女性ってマジ?ポリコレいい加減にしろよマジで

といった怒りの声や、あるいはかつて「007」と同じく定番の長寿シリーズだった邦画「男はつらいよ」シリーズになぞらえて、

『男はつらいよ』の寅さんを女性、藤山直美氏が演じる感じか…。

といった意見も見られた。

しかし、007最新作の製作中の情報は配役などでしばしば観測や誤報がありがちで、冷静に割引いてみる必要はある。ツイッターの映画ファンの中には、

これは『#BOND25』以降に007が黒人女性に代わるのではなく、劇中の話。しかも冒頭からだというのだから、彼女が敵組織に殺されたり、裏切ったりしてボンドが復帰する、というような展開だってあり得る。クレイグの後任が注視される中、ミスリードか、意図的な話題作りではないか?

という見方を示す人もいた。一方、ヤフコメの専門家枠では、映画ジャーナリストの斉藤博昭氏が投稿し、

このニュースで早合点しないでほしいのは、ではダニエル・クレイグがシリーズを降板する次の26作目から、彼女が「007」で主役を演じる……わけではないということです。

と指摘した上で、

次の7代目ジェームズ・ボンド役については今のところ未定で、ジェイミー・ベル、トム・ヒドルストンなど、ファンの期待も込めて予想が出ていますが、ともにイギリス出身の白人。ダニエルが降板するかどうかというとき、黒人俳優のイドリス・エルバが有力候補に上がった際に、激しい賛否が巻き起こったように、多様性に積極的な映画界においても、ボンド役の「伝統」への固執は強いので、今回のようなニュースにも過敏なようです。

と、これまでの経緯を振り返っていた。

実際に「クレイグ・ボンド」の後継者を、リンチさんが演じるか不透明なのは確かで、7代目ボンド役を占う意味でも最新作の話題づくりになったのは間違いなさそうだ。なお、YouTubeの公式チャンネルでは最新作の一部シーンが公開されている。