立憲民主党が6月に「象徴天皇制の未来のために 安定的な皇位継承を確保するための論点整理」と題し、女系天皇を容認する報告書をまとめた。
筆者には、70人を超える立憲民主党の国会議員の意見が、この報告書でまとまったというのが不思議である。自由民主党が男系維持だろうから、自民党との違いを出したかったことは想像がつく。国民民主党は、女性天皇は容認だが男系維持を掲げている。
しかし、皇位継承がそのような政党間の争点になることは望ましいことだろうか。筆者は「女系天皇容認」か、「男系維持のための旧宮家の皇族復帰」かの選択は、各政党が方針を決めるべき問題ではなく、十分な期間を置いて様々な議論を尽くした後で国民投票にかけるのがもっとも望ましいと思う。
現在行われている参議院選挙では、消費増税と年金の問題、憲法9条改正と安保法制の問題、沖縄の米軍基地と日米安保体制の問題、原子力発電の問題、韓国・中国との外交問題…これらについては意見がまとまっていなければ政党としての体をなさないことは確かである(筆者は 7月9日に投稿したとおり、年金は税方式とし消費税を充てる、9条に自衛隊と個別的自衛権を明記し安保法を廃止するという立場である)。
一方で、皇位継承をはじめ、夫婦別姓・同性婚、受動喫煙防止といった問題は、党議拘束をはずし、政治家個人の価値観に従って議論する問題に思える。たとえば、消費増税・年金の問題と皇位継承の問題は何の関係もないからである。
女系天皇を容認するにしても、男系維持のために旧宮家の皇族復帰を認めるにしても、国民の理解が重要である。立憲の報告書でも皇位継承を考える際の基本的な視点の1つとして「国民の自然な理解と支持を得られること」をあげている。
国民投票によって国民の意思を明確にすることが、対象となる方々のお気持ちを促すことにもなる。
※現在の皇室の現状では、国民投票が愛子様と悠仁様、ひいては皇太子家と秋篠宮家の人気投票になってしまうかもしれないが、やむをえない。
ちなみに筆者は女系容認である。理由は立憲の報告書とほぼ同じで、皇位継承の安定性を考えるからだ。大正天皇には4人の成人した男子がいたし、5人の男子の孫がいた。それでも男子のひ孫は2人(今上天皇陛下と秋篠宮様)だけになり、次世代は悠仁様だけになってしまった。今後、数人の旧宮家男子が皇族復帰しても皇位の安定的継承にならないことは明白である。
男系維持にこだわることは、角を矯めて牛を殺すになると思う。
そもそも神話の世界では、イザナギとイザナミの子が天照大神であり、天照大神の夫は不明だが、その子孫が神武天皇である。イザナギとイザナミにとっては現在の皇室は女系だ。日本は古代から男系にこだわっていたわけではないのではないか。
※女系天皇を容認した場合の懸念は配偶者選びである。皇太子妃選び以上に難しくなる。
たまたま筆者の意見は女系天皇容認だが、国民投票の結果には逆らえない。それは現在、意見を述べている人たちも同じだ。
天皇制は日本の伝統とも深くかかわっている。令和の新天皇陛下の即位で国民の関心も高まっている。国民投票によってさらに関心は高まろう。皇位継承の問題は、一部の有識者や多数党の意見だけで決めてしまうのではなく、民意を問うことが望ましい。
浦野 文孝
千葉市在住。歴史や政治に関心のある一般市民。
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