「嫌になったら逃げていい」という主張を誤解する人が増加中

こんにちは!黒坂岳央(くろさかたけを)です。
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「嫌になったら、人生逃げてもいい」を提唱する人が増えているような感覚を覚えています。世の中の問題は逃げるべきときも存在します。戦ってはいけない相手というのは存在するのです。が、同時に逃げてはいけない場面というのもまた間違いなくあります。大事なのはそのバランス、常に戦っても逃げても良いのではありません。

FineGraphics/写真AC(編集部)

強い主張をしたくて、ついついTwitterでも本音を出してしまいました。

戦わず、逃げるべき時

戦わず、とにかく逃げるべき時というのが人生にはいくつもあります。その判断基準は、「負けて被るデメリットが、戦って得られるメリットを上回っている時」です。

例えばブラック企業に入社してしまい、長時間労働と社長や上司からの重圧で心身ともに消耗してしまうような状況です。それでいて、価値ある経験やノウハウ・スキルが身につくなら良いのですが、そうでない場合は一日も早く立ち去るべきです。頑張ることは美徳ではなく、頑張ってメリットを得ることにこそ美徳があります。ブラック企業に我慢して努めても得られるものはありません。職場環境の改善を訴えても埒が明かないようであれば、戦わずに勇気ある撤退こそが求められるアクションなのです。

また、世の中には話し合いができない相手もいます。私は昔、恵比寿の街中を歩いていて、大男に襲われかけた経験があります。論戦を望んでなんとかなる相手ではなく、腕力で勝てる相手とも思えませんから、脱兎のごとく逃げおおせました。そんな相手と戦いを挑んで、得られるものは何もありません。

こうした状況でプライドなどを大事にしても、何も良いことはありません。さっさと捨ててしまい、戦わずにとにかく逃げるべきなのです。

逃げてはいけない時

反対に逃げてはいけない時があります。それは乗り越えることで、その後の人生の資産になるようなスキル・ノウハウ・経験を得られるような局面です。

私は過去に外資系企業で働いていましたが、その時は逃げ出したくなるような場面をいくつも経験しました。米国本社に財務諸表の分析レポートを作成している時は、広いフロアの中で自分一人毎日残ってホテルに連泊しながら仕上げた事もあります。「どうか、もう追加質問が来ませんように!」とお祈りしながら、震える手でメールを送信したことは今でも覚えています。

辛い想いをしたものですが、あの時は逃げなくて本当に良かったと思っています。あの時に財務諸表を分析的に見る力を養ったことで、株式投資をするときに活きています。

また、「求められる成果を、期日通りに提出すること」というビジネスプロフェッショナルとして持つべきマインドを醸成する経験になりました。

そして何より、長い間勉強とビジネス経験をしてきた会計の分野の適正が自分にはない、ということがわかったことは自分にとって大きな価値でした。どれも逃げなかった事で、得られた宝ものなのです。

逃げるべきか?乗り越えるべきか?は自分で思考せよ

つまるところ、人生において逃げるか?乗り越えるか?は自分で思考する事が必要です。他人にいちいち、「自分は今、こういう状況で逃げてもよいか?」などとお伺いを立てることなどはできないのです。

人生において、自分の人生の経営者は自分自身です。「辛い時は逃げていい」という無責任で当てにならないアドバイスを真に受けず、バランスが大事であることを再認識することが重要なのです。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。