ネットフリックス、有料の動画配信ですが、私は日本では数年前からよく見ています。最近見ていて思ったことは今一つ、初めの頃の感動がない点でしょうか?いい作品に当たらないのであります。
これはネットフリックスだけが悪いとは思えないのです。独自の作品はともかく、配給される映画やドラマそのものが使い捨てにあるように感じるのです。6月に日本にいた際にも4-5本の映画をネットフリックスで見たのですが、申し訳ないですが、ほとんど「我慢」してみていたような気がします。見ながら「なんでこんなにつまんないの?」と思わずつぶやいた邦画もあります。
そのネットフリックス、4-6月期の成績は売り上げこそ前年同期比26%増となりましたが、世界会員総数は3月末比で270万人増と500万人増の目標に全く届かず、本家アメリカでは12万人余りの減少に転じているのです。これも影響したのか、株価もこの10日だけでも19%程度下落する状態になっています。
もちろん競争が激しくなったこともあります。アマゾンなどのほかにディズニー/アップルやNBCユニバーサルといった競合もこの業界に参入予定であります。
ただ、一つ分からないのはそれだけ大企業がこぞって参入するのに本当にそんなに動画配信を見る人が多いのだろうか、という点であります。確かに統計上では動画配信を視聴する人は増えていますがその大半はYouTubeであり、無料動画配信である点は見逃せません。確かに洋の東西を問わず、都会と地方では時間の過ごし方が違うので動画配信への期待はまだまだ高いのかもしれませんが、着実に変わっていく気がします。
また日本では20代の動画配信に対する視聴時間はYouTubeを入れて平均27分です。ちなみにテレビは同じ20代で1時間半見ています。日本で比較的多い動画配信は他にアマゾン、Gyao、AbemaTVとなっています。Gyaoは昔、宇野康秀さんが率いるUSENという会社でやっていたものをヤフーが買い取ったのですが、これも最近は陳腐化したかな、という気がします。ただ、ヤフーのポータルの中にあり、アクセスしやすいので見る方も多いのでしょう。
テレビを見なくなった世代が増えているといわれる中、有料でなぜストリーミング放送を見るのか、ある意味矛盾しているようにも感じます。
日本の連ドラ。私も最近はめっきり見なくなりましたが、視聴率のトレンドを見ると2003年の全放送局の連ドラだけの視聴率平均は11.73%、2010年が10.89%、2015年が9.13%、2019年(現時点まで)8.48%です。明らかに緩やかな下落トレンドを経ていますが、多分、若者のテレビ離れに対し高齢者がそれをサポートする形になっているとみています。
それを裏付けるものとしてNHKの朝ドラを見ると60年代から1994年頃までは視聴率30%台は当たり前で83年の「おしん」は52.6%をつけています。ところがバブル崩壊とともに急激に視聴率は低下、2010年の「ウェルかめ」で13.5%という最低を記録します。その後やや回復するも20%そこそこが精いっぱいであります。
一つには忙しいこともありますが、それ以上に言えるのは「楽しいことがたくさんある」ということかと思います。昔は娯楽が少なかったのでテレビや映画を見るのが楽しみだったという人が多いのですが、今はあまりにも多くの選択肢があり、インターネットのおかげでそれが都会に限らず、世界どこでも同じトレンドになってきたといえそうです。
とすれば冒頭のネットフリックスですが、ビジネス先行型でかなりの営業努力で売り上げは上がっているけれどほとんど視聴していない低利用な顧客が相当紛れているように感じます。
私は当地の有線テレビの契約をしていますが(当地に地上波デジタルはありません)月に1度もテレビをつけないこともしばしばあるのに契約をし続けるのは「一応何かのために」であります。ネットフリックスもそんな感じの低利用顧客で契約を切ろうと思えばいつでも切れるサービスでもあります。
これはネットフリックスが悪いのではなく、現代社会が忙しすぎるし、魅力的なことが多すぎるというぜいたくな悩みなのでしょう。ビジネスの難しさを感じます。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年7月23日の記事より転載させていただきました。