国産駄目偵察ヘリ、OH-1は用途廃止にすべき

OH-1「ニンジャ」が再び空を舞うまでの約3年3ヵ月(jwing.net)

純国産の観測ヘリコプターとして採用されたOH-1が、今年3月に飛行再開してから早くも数ヶ月が経過した。既報の通り、OH-1は2015年12月の予防着陸から約3年3ヵ月に亘り、飛行を停止して原因の究明と対策の構築に取り組んできた。今回、陸上幕僚監部装備計画部航空機課に飛行再開までの経緯と今後について、改めて詳しく話を聞いた。

エンジンの改修部品は高圧タービン・ノズルと高圧タービン・ブレードとなっているが、エンジン1台あたりの改修費用は約6000万円と高価格となっている。この理由について聞くと、「高圧タービン・ブレードは新造となっており、個々のブレードをカットバックして組上げるものとなっている。振動応力が加わるのを抑制するためには、全てのブレードを一定の形状でカットバックすればよいというものではなく、一つ一つのブレードの振動特性を踏まえて、製造時に選別作業をした上で実施している」と、高圧タービン・ブレード製造には相当の手間と時間がかかっていることを明かした。

飛行再開したOH-1には、運用能力の早期回復が求められている。このためには改修エンジンの搭載といった機体の整備のほかにも、操縦士の練度回復が必要だ。ちなみに飛行停止間のOH-1操縦士の練度維持について聞くと、「操縦士養成段階で、OH-6等の他の航空機の操縦士資格も取得していることから、OH-1以外の航空機を操縦することや、シミュレーターを用いて練度維持を図っていた」と説明。また新規のOH-1操縦士資格の取得に関しては、実機が使用できないことから課程教育は行われていなかったとのことだ。

陸自サイトより:編集部

結論から申せば、OH-1は全機用途廃止すべきです。
改修にはエンジン1基6千万円ですから、1機分であれば1億2千万円になります。しかも装備庁によれば34機全機改修まで9年はかかるそうです。

しかもOH-1は能力的にすでに時代遅れです。リアルタイムで通信できるのは音声だけ、画像は帰投してからVHSに落として見るしかできません。博物館アイテムレベルです。これを改良するならば多額の費用が掛かるでしょう。

しかも汎用ヘリと異なって、クルー以外の人員や物資を運べません。このため連絡や軽輸送任務には使えません。これらをUH-1などの中型ヘリで行えばコストがかかります。

更にOH-1はエンジン含めて専用のコンポーネントを多用しているので、せいぜいそれを34機分しか生産しないので、パーツ代が極めて高く付きます。そこまでして、この機体を復帰させる必要はないでしょう。
陸自は今後スキャンイーグルの導入を進めて行きますから、より高度でネットワーク化された偵察・ISR任務がより安価に行えるようになります。

防衛大綱や中期防を読めば、コストパーフォマンスの低い装備は廃止する、とありますから、財務省がOH-1改修の予算をつけるのは嫌がるでしょう。

であれば早急に偵察機能をもった汎用双発ヘリをOH-1、OH-6の後継として採用すべきです。これらは連絡、軽輸送、ISRなどに使えます。災害派遣でも有用であることは言うまでもありません。

ISR・偵察、軽攻撃まで必要であればスーパーツカノのようなターボプロップの固定翼機を導入すべきです。そして旧式化して生存性も低いAH-1Sもすべて退役させるべきです。
このような機体は攻撃ヘリに比べて、速度が早く、航続距離も長い。このためオスプレイのエスコートにも使用できるでしょう。

また攻撃ヘリより、より高い高度を飛べ、攻撃には精密誘導滑空爆弾も使用できるし、射出シートも装備しているので生存性も攻撃ヘリよりは高い。
しかも調達コストも運用費も攻撃ヘリより遥かに安い。現在特に陸自はFMS調達の高額装備に予算を取られて、需品や既存装備の整備費まで予算が回らないという由々しき事態になっています。より低コストで調達、運用できる装備の調達を検討すべきです。

いっそのことAH-64Dも見切り千両で用途廃止にしたほうがいいじゃないでしょうか。いずれにしてもサポートも切れるし、E型にアップグレードするにしても一気にやらないと、Dの調達の失敗の轍を踏むことになります。

それに国産ヘリの調達はもうやめるべきです。MH2000やOH-1を作ったころはまだしも夢があったかもしれませんが、日本のヘリ産業は自衛隊にしがみついているだけです。国内市場で警察や海保すら国産品を使っていません。まして内外の民間市場に打って出るという野望もありません。UH-Xにして基本は半世紀前の機体であり、落ち穂拾い的な商売しかできません。

官の側に産業育成の意識もビジジョンもないのは大変問題です。

OH-1にしても汎用型の小型ヘリとして開発して、エンジンは信頼性の高い外国製を採用していたら、その後内外で民間市場でも売れる可能性もあったでしょう。無論当時は防衛省向けの装備を民間転用することはできないかったという話はありますが、それもおかしな話です。産業として自立すればヘリの調達コストも劇的に下がるわけで、それを考えたら変な縛りをつけるべきではありませんでした。ですから、本来陸のUH-Xではエアバスヘリと川重のジョイントベンチャー案が有力視されていたわけですが、それも御存知の通りの結果となりました。

防衛需要をスプリングボードにして、企業やビジネスを育てるという意識が防衛省にも経産省にも欠けています。

我が国でヘリコプター製造は産業として成立は不可能で、防衛という官需の点滴で生きているようなものです。いつもいっていますが、50代になっても親に依存しているニートみたいなものです。であれば、こういう企業に血税を無駄に使う理由はありません。もっとバリューのある分野につぎ込むべきです。

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
コマツ、装甲車輌開発から撤退

■本日の市ヶ谷の噂■
しらぬいやFFMに採用された日本製鋼所のRWSは能力不足で、今後外国製に変更される可能性あり、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年7月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。