最近、朝鮮半島では中国、ロシア、北朝鮮による軍事挑発が相次いだ。
北朝鮮は25日、東海岸の元山から弾道ミサイル2発を発射。その2日前にはロシア軍用機が竹島(独島)領空を侵犯した。戦後、初めてであり、韓国空軍は警告射撃を行った。この日、中国の軍用機も韓国の防空識別圏に侵入したが、昨年は100回以上も無断侵入しており、国際法違反でないとはいえ、韓国を無視してきた。
中国、ロシア、北朝鮮による軍事挑発はトランプ政権のタカ派、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が訪韓する前後に起こった。ボルトン氏訪韓の背景には,文在寅政権下のいわゆる徴用工賠償判決と慰安婦合意破棄による日韓関係の悪化が日米同盟と米韓同盟を阻害していることがある。徴用工問題は文在寅氏が盧武鉉政権の首席秘書官だった2005年、日韓の請求権協定には徴用工問題も含まれ、韓国政府が救済する「道義的責任」があるとの政府見解をまとめ、慰労金等も支援した。それを国民は見ており、文氏の相次ぐ嘘に背を向ける国民が増えている。
今回、ボルトン氏は真っ先に野党の院内代表に会った。文氏は信頼出来ないという証しでメンツが潰された。先月の板門店米朝首脳会談の時も文大統領は外された。文大統領は同盟国の米国からも無視され、友好国の日本からも信頼を失った。中国から韓国大手企業の看板が一斉撤去されても何も言えない。
北朝鮮が文政権のコメ支援を拒否し、弾道ミサイルを発射したことで、北朝鮮を集中的に支援した文大統領は再び面目を失った。先に、国連制裁決議で禁じられた高級(防弾)ベンツ2台がオランダから中国・大連、大阪、釜山を経て、ロシアから北朝鮮に運ばれたことが報じられたが、韓国では文在寅氏を“犯人”と疑う声が高まっている。「文大統領は人権弁護士出身だが北の人権問題は一度も言及せず、長期独裁殺人政権の金正恩にベンツを与えた」というのだ。
さらに、「経済音痴、安保・外交音痴が国を潰しているが一度も謝罪したことがない」「文大統領は経済破綻への国民の非難世論を外に向けさせるため、反日感情を煽っている」とも指摘されている。文政権は相次ぐ失策で国内外の厳しい世論に晒されて窮地に陥った。
韓国の歴代大統領は亡命、暗殺、自殺、収監など悲惨な結末を迎えた。「次の順番は文大統領だ」と言われる。早く国民に謝罪して、 右側にハンドルを切らないと不幸な結末を迎えるしかないだろう。
(拓殖大学主任研究員・韓国統一振興院専任教授、元国防省専門委員、分析官歴任)
※本稿は『世界日報』(7月31日)に掲載したコラムに筆者が加筆したものです。
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