真夏の夜の夢 〜 看護師さんが見せてくれた夢のひと時

恩田 聖敬

昨年の夏の入院中、私が気管切開するかどうか悩み、最もやさぐれてた頃の話です。呼吸の辛さもあり、病院の看護師さんにも心を閉ざしていました。

そんなある日、とある看護師さんが「恩田さん、花火見るよ‼︎」と私に声を掛けてくれました。そして、花火の見える部屋に私を連れ出してくれました。

岐阜の夏の花火は、実は全国で有数の規模を誇るのです。自宅のマンションからも見えるので、毎年家族で見てました。

その時は家族は自宅でしたが、ついてくれていたヘルパーさんから、妻に「花火見てるよ」とLINEしてもらうと、「こっちも見てるよ」と返事がありました。物理的に離れて居ても、ちゃんと繋がって居ると再認識出来ました。やさぐれた私の心を癒す出来事でした。この日を境にして、私は看護師さんと打ち解けていきます。

患者に花火を見せることは、看護師さんの本来の業務では勿論ありません。しかし、あの時の私には最も必要な『治療』だったのかもしれません。あの看護師さんはそれを見抜いて、私を連れ出してくれました。

「患者に深入りし過ぎるな!」という言葉を、この業界では良く耳にします。運営側の論理としては一理ある考えだと思います。それでも、あの時看護師さんが、私に対して一歩踏み込んでくれたことで、少なくとも私の心は大いに救われました。

「患者と看護師」といえど、あくまで「人と人」です。素晴らしい看護師さんと巡り会えたことに、感謝したいと思います。

恩田 聖敬


この記事は、株式会社まんまる笑店代表取締役社長、恩田聖敬氏(岐阜フットボールクラブ前社長)のブログ「片道切符社長のその後の目的地は? 」2019年8月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。