乱射、放火をする心理

京都アニメーションの放火事件の記憶も冷めぬ中、アメリカでは2つの銃乱射事件で1日にして合計29名の方が亡くなっています。アメリカの事件は無差別殺人と報道していましたが、私はそうではないとみています。

(写真ACから:編集部)

(写真ACから:編集部)

テキサスで20名の死者を出した事件は21歳の犯人が移民反対をSNSに書き込んでいたとされ、明らかに移民の人でごった返すメキシコ国境に近いウォールマートを狙い撃ちしたとみています。オハイオ州の事件は犯人の妹が巻き込まれたと報じられていますが、単なる偶然ではない気がします。

日本でもアメリカでもこの手の事件で一般的に共通して言えるのは動機が客観的にみて軽微、利己的な理由、強度のストレスで強迫観念を引き出すケースといったことが挙げられるのではないでしょうか?

最近では日本のニュースで子が親を殺す、親が子を殺す、妻を殺す、夫を殺すといった身内での殺人事件も多発しています。こう言ってはご指摘を受けるかもしれませんが、かつては男が女性を事件に巻き込むケースがほとんどだったと思いますが、最近は逆のケースが増えていることも気になっています。

統計的には女性による犯罪率は昭和の時代から平成にかけて10%ポイントも上がって2割の水準となっています。なぜ、平成になり女性の犯罪率が急上昇したのか、社会的背景はおおいに分析する価値はありそうです。可能性の一つに女性の社会進出に伴う男性との立場の変化がもめごとを引き起こしやすくなった可能性は研究する価値があると思います。

ちなみに一般的な犯罪で見ると、女性の高齢者による犯罪が顕著に増えており法務省の調査報告書には,「一般刑法犯による高齢者の検挙人員の 3 人に 1 人が女子」と記されているほどです。

では男女問わず、殺人事件の場合、何が動機かといえば憤怒、怨恨といった昔から変わらない理由のほかに介護・看病疲れ、子育ての悩みといった平成に入って出てきた新しい傾向が見て取れます。

とすれば時代背景の一つにベイビーブーマー族を親に持つ子供たちとの社会的ギャップは無視できない理由の一つかもしれません。事件後のインタビューで家がしっかりしている「あの子供が…」という話はよくありますが、「きちんとした親」から「きちんとした子」ができるという図式がなく、むしろ、そのギャップこそが事件を生み出すともいえるでしょう。ちょっと前には農水省の元事務次官が放蕩息子を殺人したという話もありました。

もちろん、親子殺人は昨日今日に始まったわけではなく、あの名作「カラマーゾフの兄弟」も親子殺人の話でありますがあの作品の初出は1879年ですからいつの時代にもあるとも言えます。

ただ、私があえて気になっているのはストレスは仕事だけではなく、家族構成、更には人間関係からも発生し、一言で言えば「ギスギスした生活をしている」人たちが思ったより多い、ということとそのストレス発散で自虐的になり、乱射や放火に走る心理的導火線の役目をはたしていないでしょうか?

テキサスで20人殺害した男が仮に移民に反対してその犯行に及んだとすれば彼にとって移民が自分に何か悪い影響を与えた何か動機があったはずです。これがこの犯人のストレスです。問題は普通の人ならそれを我慢するなり、議論で訴えるなりするのですが、銃をとってしまったことに短絡性が見いだせます。

京アニのケースではガソリンという誰でも手に入るものが凶器となった点が恐ろしいです。かつて高圧洗浄機にガソリンを入れて火をつけようとした原宿暴走事件もありました。つまり、凶器はいくらでもあるということです。そしてある日突然「切れる」のが大方の犯行の背景です。相模原施設での殺人事件でもそうだったと記憶しています。

「切れない」人間を作る、これが現代社会における使命となりそうです。どうすればいいかですが、少なくとも人間関係を深くすることです。SNSではなく、リアルの関係です。そこには人間が本来持ち合わせている「制御」する気持ちが育まれます。SNSは顔を合わせないが故に好き勝手でかなり過激なことも発言できますが、十中八九の過激発言者は実際に会うと非常におとなしい人間であったりするものです。

我々の社会では技術革新と共に人間としての持つべき「機能」が一部欠落してきているように感じます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年8月5日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。