「安全保障関連法に反対する学者の会」とは
「安全保障関連法に反対する学者の会」(「学者の会」)は、自民党安倍政権によって進められていた平和安全法制に反対することを目的に、2015年6月に日本の左翼系学者・研究者らにより結成された左翼系政治集団である。
(※編集部より:下記リンクは2019年6月23日の学者の会による記者会見を報じたYouTube)
安保関連法が成立した翌日の同年9月20日の「学者の会」の抗議声明では、
立憲主義と憲法に違反する集団的自衛権の行使を認めた安保関連法は、日本を戦争国家に転換させる戦争法であるから、その適用を認めず廃止へと追い込む運動を展開する。
と宣言した。爾来、4年が経過した現在では、呼びかけ人は60名を超え、学者・研究者の賛同者は1万4000人を超え、市民の賛同者は3万2000人を超えた。「学者の会」は他の左翼系市民団体とも連携し、さらに、日本学術会議にも強い影響力を行使し、日本の各大学における「防衛関連技術研究」に対して強力な反対運動を展開している。
中国の海洋進出に沈黙する「学者の会」
この4年間における「学者の会」の各種声明や運動方針、会員学者らの見解等を観察すると、安保関連法を「戦争法」であると糾弾し、その廃止を求める政治的立場や反対運動は日本共産党と同じである。「安倍改憲反対」「自衛隊違憲」「安保条約反対」「辺野古新基地建設反対」等の諸点でも、共産党と何ら異ならない。
そして、近年、核戦力を含む軍事力を急速に拡大し、南シナ海での国際法を無視した軍事基地建設や、東シナ海での尖閣諸島への常態化した領海侵犯など、力による現状変更を試み海洋進出を図る中国の脅威については、一切批判せずに沈黙している。その反面、こうした中国の脅威に対応し抑止するための平和安全法制による日米同盟の強化こそが日本にとって極めて危険であると主張し、もっぱら自民党安倍政権の安全保障政策を激しく攻撃している。
日本の安全保障の根幹を否定する「学者の会」
このような「学者の会」の政治的主張は、戦後、自衛隊と日米安保の抑止力によって守られてきた日本の安全保障の根幹を否定し、憲法違反の自衛隊や日米安保は不要であり、ひたすら「憲法9条」を守ってさえいれば、日本は未来永劫平和を享受できるという「憲法9条信仰」がその根底にある。このような「学者の会」の極端な「憲法9条信仰」は、侵略を受けた場合の無抵抗主義に繋がり、「奴隷の平和」をもたらしかねない。
しかし、日本共産党でさえ、「急迫不正の主権侵害があった場合は、自衛隊を活用する」(2016年参院選党首討論での志位和夫委員長の発言)と明言し「自衛戦争」を認めている。また、日本の社会主義者の荒畑寒村でさえ、「侵略のためではなく自衛のための軍備は必要であるから、憲法9条は改正すべきである」(荒畑寒村著「荒畑寒村著作集」第4巻376頁以下。1976年平凡社刊)と言っている。
このように、戦後、自衛隊と日米安保の抑止力によって守られてきた日本の安全保障の根幹を否定し、日米同盟強化により、海洋進出を図る中国に対する抑止力強化に有益な平和安全法制の廃止を主張し反対運動を行う「学者の会」は、日本の平和と安全、並びに日本国民の生命財産を著しく害する危険性のある左翼政治集団であると言わざるを得ない。
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加藤 成一(かとう せいいち)元弁護士(弁護士資格保有者)
外交安全保障研究。神戸大学法学部卒業。司法試験及び国家公務員採用上級甲種法律職試験合格。最高裁判所司法研修所司法修習生修了。元日本弁護士連合会代議員。弁護士実務経験30年。