昨日の日経新聞「臨時国会召集 10月軸に」の記事によると、秋の臨時国会に会社法改正案が提出されるそうだ。
会社法改正案では「社外取締役の設置を義務付ける。社内の利害関係に縛られない第三者の視点を取り入れ、経営の監視機能を強める」そうで、その狙いは「日本の株式市場の透明性を高め、海外投資家の資金を呼び込む」のだそうだ。私には極めて疑問だ。
米国では社外であろうと社内であろうと取締役は株主の代表。第三者の視点のためではない。投資家の代表ではない取締役がいくらいても海外投資家はその会社興味を持たない。自分たちの代表がいてこそ興味を持つ。
なお以下は、これに関し平成19年度(2007年度)広島大学法学部の入試に使われた私の一文。
米銀勤務時代に、ある新聞社に匿名での連載を依頼され、ペンネームをどうしようかと悩んだことがある。オオニシ先輩に相談したら、出てきた案が『平成の巌窟王』(がんとして自説を変えない)、「朝顔」(朝は予想が当たって元気だが午後にはマーケットが逆に動いて、しおれてしまう)など。言葉の遊びは面白かった。しかし、言葉は使い方ひとつで印象が変わるからこわい。会社間の『敵対的買収』という言葉では『買収者は悪者』というイメージが強くなってしまう。
失敗に終わったとはいえ、最近の製紙業界のケースもそうだ。これは日本独特の事情もある。欧米でも買収される会社の取締役会が反対なら『敵対的買収』ということになるのだが、欧米の取締役会は、基本的に株主の代表が占める。出世したい従業員の目標は、執行役員である。日本では未分化で『取締役=経営者=従業員代表』という場合が圧倒的に多い。
『敵対的買収』は本来、株主が反対している買収――というのが世界の常識のはず。日本では経営者が自分の地位を守るためにこの言葉をつかっているのではないか、というのが私の疑問である。
出典:(フジマキに聞け)「敵対的買収の意味は」(朝日新聞2006年9月16日朝刊be)
元モルガン銀行東京支店長。ジョージ・ソロス氏アドバイザーを歴任。一橋大学卒、ケロッグ経営大学院修了 MBA取得。学校法人東洋学園大学理事。仮想通貨税制を変える会会長。2013年〜19年、参議院議員を務めた。オフィシャルウェブサイト、Twitter「@fujimaki_takesi」
編集部より:この記事は、経済評論家、参議院議員の藤巻健史氏(比例、日本維新の会)のFacebook 2019年8月8日の記事をアゴラ用に加筆・編集したものを掲載しました。藤巻氏に心より御礼申し上げます。