曙ブレーキだけじゃない。日本の大企業凋落の理由

清谷 信一

債務超過の曙ブレーキ、銀行との溝は埋まるか 経営危機の引き金となったアメリカでの失敗(東洋経済オンライン)

曙ブレーキの債務超過が話題になっていますが、多くのメディアの分析は表層的です。

曙ブレーキの荻野好正CFO=最高財務責任者(NHKニュースより:編集部)

問題の根源は同社の硬直した体質や社風にあるでしょう。

実際に勤めていた人間やで出入り業者、自動車関連の人間に聞いたのですが、同社では社長兼会長の車が見えなくなるまで、見送りの社員はお辞儀をしなくてはならない。また大株主のトヨタ以外の車で業者がくると叱り飛ばす。

まるで封建時代です。

21世紀になってこういう企業が生き残れるわけがないでしょう。

多くのメディアは財務体質やトップの決断、特にアメリカでの買収失敗という直接的な原因に言及するだけで、同社の封建時代のような社風までを問題にしません。

こういう体質では社内で特に上司に自由に物が言えず、ヒラメ社員が増えます。

また革新的なアイディアはでないし、出ても潰されるでしょうし、悪くすれば会社を追い出されます。このような体質では21世紀の複雑化したビジネス社会で生き残れるわけがない。

昔の話ですが弟が、ダイエーに営業に行ったときのことです。

ダイエーのレストラン事業部長に直接話しかけたら、おつきの社員から「不遜である」と叱責されたそうです。

いちいち担当の社員に話しかけて、それをその社員がオウム返しに事業部長に伝えるわけです。

まるで天皇陛下か将軍様です。
ダイエーはその後潰れました。

ですが、未だにこういう事大主義、硬直した体質の大企業が多いわけです。

ですから、変化を嫌うし、多様な意見や、社員を尊重しません。ですからいつまでの旧来のやり方を踏襲して何度でも失敗します。

第一次世界大戦で機銃や火砲が発達したのに、後方で指揮を執る将軍たちは、従来の突撃による白兵戦を強要し、あたら兵隊を殺しました。

何度突撃に失敗してもそれを改めませんでした。このため前線の将校の寿命は3週間と言われていました。

それと同じことを日本企業はやっているわけです。

例えば白物家電が駄目になったのにそれの固執して事業転換をせずに駄目になっているのが東芝やシャープなどです。

仮に家電をやるにしてもやり方があるのに、銃剣突撃を繰り返して、韓国や中国の企業に負けました。

ところが一方、アイリスオーヤマは新規で家電に参入し儲けをだしています。それは既存企業と違うアプローチをしたからです。そして家電大手をリストラされた技術者を雇用しています。

つまり、経営者が無能だったということです。

時代の変化が理解できず、通用しなくなった自社の文化の変革もできなかった。

特に駄目なのが我々バブル世代の以上の経営者やシニア社員です。

こういう企業は外国企業に買収されるか、解体しないと駄目でしょう。

また得てしてこういう大企業の文化にどっぷり使った社員は「会社の常識」にどっぷりつかっているので、他社にいっても使い物になりません。

■本日の市ヶ谷噂■
いずも級、ひゅうが級DDHの、1基100億円のNEC製の艦首ソナーは、公試で一度使った以来使用していない無用の長物との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年8月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。