為替操作国指定:今度の舞台は”通貨”

先週8月5日、アメリカが中国を為替操作国に指定しました。
※為替操作国については前回の記事をご覧ください

いずれにしても、米国による中国の「為替操作国指定」によって米中の争いはより深刻化しました。
当然、日本も影響を受け、円高が進み、連動する形で株安にもなりました。

株安は円高はイコールのような動きをします。しかし、円高が定着することになれば日本は輸出が不利になり、経済が落ち込むことになります。そして、輸入品が安くなる。結果として物価が上がらず、デフレが続くことにもなってしまいます。貿易というのは基本的に物の取引、輸出入を指します。昨今は様々なサービスも取引されており、広い意味で貿易に含まれ、米中は貿易戦争をやってきました。

今度は通貨戦争です。
通貨は貿易とは違います。

取引をする上で、価値を決めるのが通貨になります。世界の通貨は「ドル」が基軸通貨と呼ばれ、ドルを中心に価値が決まっています。日本では、1ドル107円などとニュースで毎日報じられているように、毎日変動する変動相場制です。通貨価値は基本的に、市場原理で決まります。金融市場ならば、各国の金利や通貨供給量が要因になります。また貿易面にも影響を与えるわけで、経済の強弱が、通貨の強弱にも繋がってきます。すなわち貿易黒字が多い国は通貨が高くなり、貿易赤字の国は通貨が安くなります。しかし、アメリカは中国が為替操作をして稼いでいるにも関わらず、元を安く誘導していると判断しました。

金融市場では1ドル7元が一つの目安でしたが、これを超えて安くなっても中国当局は放置したとアメリカは見ました。なぜ、中国当局は容認したのかというと、貿易戦争でアメリカが高関税をかけたことを相殺できるからです。

どうしてか、ドル(高)>元(安)になると、アメリカの消費者が中国からの輸入品を積極的に買うようになります。
コスパがよくなるからです。中国からの輸入品に関税がかかって高くなったにも関わらず、元安でそもそもの値段が下がるから相殺です。

日本円は変動相場制ですが、中国元は、中国人民銀行(中央銀行)が基準値を毎朝10時15分ごろに発表します。その基準値の±2%の範囲内でしか上下しない。いわば長期に渡って為替操作国だったとも言えます。

米中貿易戦争から通貨戦争へ戦線が拡大したと言えるわけですが、拡大し続ければ全面戦争になりかねません。でもこれは私が前から言ってきたように、米中の覇権争いの過程の中にあります。
※過去記事 米中貿易戦争、それとも覇権争い?何れにしても一体どうなる?


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年8月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。