日本でたまに行く観光施設はよく整備され、展示物とその説明も充実しています。去年だったか、名古屋城に行った際も長蛇の列、でも確かにこれは並ぶ価値があると思わせる立派な改築と展示物だったと思います。日本は水族館、動物園、美術館などとにかく施設のレベルは非常に高く、満足させてくれる度合いは高いと思います。
一方でハード(うつわ)頼みの傾向が無きにしも非ず、という感じもあります。正統派と言うべきか、まじめな取り組みが多く、まずはお客様に失礼がないような箱物を提供します。なるほど、これは大事でありますが、サプライズが少ないのが難点かもしれません。
この数年、上野動物園に2、3回行ったのですが、あの動物園も私が幼少の頃と何一つ変わっておらず、体験型のアトラクションが極めて少ないのです。つまり、遠目から中にいる動物を見るだけで動物に触れるといった双方向性や面白いエンタテイメントがあるわけではないのです。なぜないのだろうか、と誰も感じないのでしょうか?
あるいはパンダ舎の前はひたすら長い行列でしたが、行列する人に飽きさせないパントマイムや大道芸の見世物、あるいはパンダの知識を広める動画を流すとか、工夫がないのが不思議でしょうがないのです。
浅草や御徒町アメ横は何が面白いか、といえば活気と発見なのだろうと思います。豊洲市場はわたし、まだ行っていないのですが、きっときれいなレストラン街が整備されているのだろうと思います。しかし、人々はそんなきれいなところに行くことにドキドキ感を持っていないのです。「へぇ、こんなところで」というサプライズが面白いのでしょう。
週末の昼のテレビで街を探訪する番組がいくつかあるのも結局与えられた施設ではなく、こんなところにこんなものが、という発見なのではないでしょうか?
その点、バンクーバーなんて整備されたところは極めて少ない街です。日本の施設に比べたらしょぼいを通り越しているかもしれません。80-90年代は年間50-60万人も日本から観光客が来たバンクーバーも今や25万人。理由はリピートするほど面白くないから。しかし、地元の人たちはお金を払ってどこかに行くところがなくても面白ことを見つけ出す能力は長けているかもしれません。
バンクーバーから1時間ちょっと行った有名な景勝地。ゴンドラで10分ほど登れば雄大な景色が見られますが、私は歩いて登ります。そのルートはゴンドラの終点まで切り立つようなところを這いあがり、ロープや鎖をつかみよじ登るような「難所」を含め全行程7.5キロ。2時間半で登り、上で心地よい風に吹かれて下りはゴンドラで帰ります。(最近、馬鹿者が早朝、無人のところでこのゴンドラの太いケーブルを切って逃げました。ゴンドラは無残にも地面に落ち今年の復旧は絶たれました!)
もっと簡単なハイキングもあるし、無料野外コンサートもいくつかあります。BBQなんていうのも楽しいですし、何もないから何かを作り出すのが上手だな、と思うのが欧米のスタイルかもしれません。
日経に「『ショボい』水族館、アイデア集客 小さい・古い・お金もない…でも魅力いっぱい」という記事がありました。伊勢シーパラダイスなどではお金がなく設備も古いところは工夫をすることで集客をしていて成功しているという記事です。
日本は箱ものに金をかけ過ぎ。逆にこれだけかけたから客は来るという奇妙な自信が運営側にあるのですが、それは運営者の驕りというもの。客は非日常を体験できるのか、サプライズがあるのか、ストレスなく、楽しかったね、と家族に笑顔を提供できるのか、この工夫はもっとできると思います。
池袋サンシャインのショッピングモールの中に吹き抜けの噴水エリアがあり、週末には無料のイベントが時折開かれています。それ以外にも建物内の各所でミニコンサートやイベントが随時開催され、このイベント目的でわざわざ駅から10数分もかけてサンシャインにくるお客さんも多いようです。
一方で駅直結のデパートは何の工夫もない、商品を売るだけ。これじゃ、ダメだって何年もこのブログで指摘しているのですが、一向に経営者は気がつきません。(いや、おひとりだけいました。日本最大級のデパートの元社長、O氏が私のブログに至極同意いただき、個人的にやり取りしていたこともありました。その後、彼はいろいろ言われ、失脚してしまいましたが見方を変えればアイディアマンだったようです。)
日本がもっと面白くなるように皆さんで盛り上げていけたらいいですね。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年8月20日の記事より転載させていただきました。