日本に国産戦闘機を開発する当事者能力なし

清谷 信一

F2後継戦闘機、「事項要求」で開発費計上へ(読売新聞)

政府は、航空自衛隊のF2戦闘機の後継機開発費を2020年度予算案に計上する方向で最終調整に入った。日本主導の開発を目指し、開発費は現時点で総額1兆5000億円以上と見積もられている。F2の退役が始まる30年代半ばの導入を目指す。

共同開発を巡っては、米空軍のF22戦闘機を基にF25の電子機器を搭載する米ロッキード・マーチン社の案などが出ていた。ただ、1機200億円を超え、システムの設計図も「完全に開示される保証はない」(防衛省幹部)ことなどから、日本政府内では否定論が多くなった。一方、英政府は、次世代戦闘機「テンペスト」の開発を目指している。F2後継機と開発時期が重なるため、日英国防当局間で共同開発の可能性について意見交換している。

後継機配備が始まる30年代半ば以降の空自戦闘機の体制について、政府は、対空・対艦・対地攻撃など多様な任務を遂行できる最新鋭ステルス戦闘機「F35」(ロッキード・マーチン社)147機、空対空能力が高いF15(米ボーイング社)の近代化機約100機と後継機という陣容にする構想だ。

航空自衛隊のF2戦闘機後継機について、政府が日本主導の開発を目指すのは、国内の防衛産業基盤を維持・強化する狙いがある。

F35戦闘機(空自サイトより:編集部)

そもそも我が国にまともな戦闘機を作れるノウハウが存在しません。それはF-2のときも明らかだったでしょう。しかもたかが1.5兆円の開発費で済むというのはお花畑もいいところでしょう。しかも調達は90機程度です。開発費を頭割りすれば費用対効果が悪すぎます。F-2同様に調達単価と開発費が高騰して、調達数が削減され更に1機あたりの単価が高い失敗作に終わるが今から見えています。

更に申せば、先のFXで国産基盤維持の問題をウヤムヤにしてF-35を調達しました。F-35の導入は事実上日本の戦闘機生産基盤の破壊でした。FACOといっても単なる組みてで、日本製コンポーネントの生産はほとんどなく、技術移転もこれまたほとんどない。財務省が輸入に切り替えろと圧力をかけたのは当たり前の話です。

同時に搭載兵器の生産基盤の破壊でもあります。F-35は国産兵器を搭載できませんから、その分国産兵器の生産数は減ります。であれば調達単価は跳ね上がります。バカでも分かることが永田町や市ヶ谷の人たちにはわからなかったようです。そもそも2個飛行隊分、42機では効率的なライセンス生産ができません。

ですからぼくは当時から調達機数は増やして、ユーロファイターを選ぶべきだ。F-35を導入するならばその後に、B型を少数導入すればいい。それ以外に生産基盤の維持はできないからです。その見解は今も変わりません。

既に日本の戦闘機の生産基盤は失われており、F-3を国産するにしても生産基盤の維持ではなく、再構築となります。失われた技術、撤退したベンダーも多く、コストはその分高くなるでしょう。

実際問題として共同開発しか道はないでしょう。ですが米国とやるとF-2同様のそれ以上に悪い結果になるでしょう。核心的な技術は全部ブラックボックスで成果だけは米国に持ち去られる。戦闘機に関しては日本の奴隷化を図っています。

ですが日本政府はその奴隷に喜々としてなるでしょう。何しろ自分たちで検討もしないで、米国に言われるまま、不要なグローバルホーク、オスプレイ、AAV7を導入、更にイージス・アショアまで唯々諾々と導入しようとしています。これらの爆買によって、自衛隊の予算が圧迫され、他の装備の稼働率が下がり、需品に回す予算にもことかいています。結果爆買が自衛隊の能力を低下させています。それでも米国製兵器の爆買をやめないのが安倍政権です。

技術&生産基盤を維持するのであれば英国との共同開発しかないでしょう。ですが盲目的対米追従が習い癖になっている政府、防衛省、空自はそれを選ばない可能性が強いのではないかと思います。ユーロファイターを選択していれば、ライセンス生産や近代化を通じて生産や技術基盤の維持もできたでしょう。

はっきり申し上げて、日本政府、防衛省、航空自衛隊も当事者意識も能力も欠けているとしか言いようがありません。横田空域も占領されたままで、放置している国に国益が主張できるわけがありません。

できないことをできると信じる、現実を見ようとしないテクノナショナリズムは危険でしかありません。

■本日の市ヶ谷の噂■
陸自の次期8輪装甲車は三菱重工製の16式の派生型だが、自走迫撃砲の迫撃砲はタレス製2R2M。コマツがブラジル製のこれのコピーを提案しようとしたが陸幕に拒否された、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年8月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。