「横浜・林市長の白紙は撤回なの?伝わりにくい政治家の言葉」のアクセスがよかったので追記します。
横浜市の林市長はカジノなどを含むIR=統合型リゾートの誘致を正式に表明しました。しかし、「白紙」から一転、誘致表明に転じた市長に、市民が激しく反発しています。
8月22日、林市長の記者会見で次のようなやりとりがありました。
記者:「市長選で『白紙』だと言ったのは間違った判断だと思わないか?」
林市長:「思わないですね。事実『白紙』でしたから」
筆者はリゾートのことはわからないので、その是非について申し上げることはしません。しかし、少なくとも記者が次のように切り込んだら状況が変化したと思います。
記者:「市長選で白紙だと言ったのは間違った判断だと思わないか?」
林市長:「思わないですね。事実白紙でしたから」
パターンA:次のような切り込みをプラス
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記者:「林市長は、フォルクスワーゲンジャパンの社長、ダイエーの会長兼CEO、東京日産自動車販売の社長を歴任しています。フォルクスワーゲン、ダイエー、日産で『白紙』はどのような意味で使われていますか?」
パターンB:もしくは次のような切り込みをプラス
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記者:「取引を白紙にするという言葉があります。『取引は中止になる』という意味です。『何もなかった状態に戻る』という意味のはずですが、これについてはどう思いますか?」
パターンC:もしくは次のような切り込みをプラス
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「フォルクスワーゲン、ダイエー、日産では、『白紙は継続する』という意味で使用されるのですか?これについてはどう思いますか?」
ビジネスの最前線で活躍されていた林市長の言葉ですから非常に重いものになるはずです。「ハマのドン」こと藤木幸夫横浜港運協会会長(89)は「山下ふ頭は我々の聖地。命を懸けて反対する」と緊急会見しています。事前の根回しはなかったのでしょうか?
政治家が言葉を使い分けることは大切なスキルであることは言うまでもありません。しかし、有権者にとって裏切られたような印象を残すことは好ましくありません。
信頼感が揺らいで政治不信につながる危険性があるからです。言葉の解釈で押し切っても有権者は納得しません。政治家の説明は具体的でなければ説得力がありません。
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※14冊目の著書『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)を出版しました。