知っトク解説:今回は“WTO”

中田宏の知っトク解説。今回は“WTO”

貿易についての議論で、最近よく出てくるキーワードが“WTO”です。
日本が韓国への半導体材料を輸出規制した時、韓国は「WTOに訴える」と言っていました。

WTOができたのは1995年、約20年前でそれまでは世界の貿易を統括する機関は実は存在しませんでした。
それまでは関税と貿易に関する一般協定という多国間協定があり、それぞれの国はこの協定を締結しているだけでした。
これをGATT体制と言います。GATTは戦後の1947年にジュネーブで調印され、1948年に発効されました。日本の加盟は1955年です。

貿易を活発にするために、その原則は「自由」と「無差別」。すなわち、自由貿易を大原則として国によって差別をしないということです。

GATT体制は大きな教訓から生まれました。その教訓とは、貿易の停滞が第二次世界大戦につながったという教訓です。「1929年にアメリカで株が大暴落し、翌1930年から世界が大不況に陥り、世界各国が経済をブロック化して、特にアメリカ、イギリス、フランス、オランダなどが自国ファーストとして保護貿易に走った結果、戦争になった」という教訓です。GATT協定は、長年その運用と更なる議論を積み重ねてきました。そして1986年に有名なガットウルグアイラウンドという交渉が始まり、より多角的に貿易を活発化させていこうとWTOが設立されました。

WTOの特徴は、例えば農業、繊維、鉄鋼などの各分野ごとに協定を定めて、不当な取引の防止や輸入急増時のルールについて定めています。要するに物の取引を自由にしていこうということです。次に、建設や知的所有権など物だけではなくサービス分野の協定を定めて実行していくことです。要するに、GATT体制のときは基本的に物の取引だけでしたが、WTOではサービスにも拡大しました。さらにWTOでは貿易紛争に関する解決の手続きを定めており、「パネル」と呼ばれる紛争解決のための委員会を設置しています。国と国との間で貿易制限や制裁の応酬にならないように、裁判所的な機能を持ったということです。

日本と韓国の間の半導体材料の輸出入問題は、日本が韓国への優遇措置を元に戻しただけですからWTOの管轄外と言えます。
一方で、アメリカを中心に各国間よりも2国間でルールをつくるということ、これはWTO軽視と言えますので、こうした動きが今後どうなるか気になります。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年8月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。