周南市の施設で水素が供給されている場所は他にもあります。その1つが道の駅「ソレーネ周南」です。ソレーネには圧縮した水素をカードルという水素ボンベを積み込んだ機材が運ばれて来ているのです。
このカードルが設置されている場所から3.5KWの純水素燃料電池まで水素配管が敷設され、水素が運ばれて行きます。燃料電池でつくられた電気と温水は、レストランの電力とお湯に使用されています。因みにお昼は、このレストランで地元豚のカツカレーを食べました。本来であれば、水素ガスを燃焼してつくる水素料理が食べることが出来れば…と思ったのです。
周南市から少し外れますが、山口県山陽小野田市にある長州産業に訪問しました。長州産業は長野県で、水力発電による電気と川中島の地下水を使って水素製造を行い、70MPaの水素充填を行うことが出来る再エネ由来の水素ステーションSHIPSを提供している企業です。G20エネルギー・環境大臣会合が、軽井沢で行われた際のサイドイベント「令和の水素お茶会」。ここで振舞われたお茶は、SHIPSで再エネ水素を充填したFCVの電力で沸かされたお湯が使われていました。水素エネルギーは様々な形で使うことが出来るので、お茶会、コンサート等、モデルを示す必要があると考えます。
長州産業の本社には、SHIPSの小型版のステーションが設置されています。長野は、水力発電でつくられた電気を使用するモデルですが、ここでは太陽光発電でつくられた電気を使用するモデルになっています。自社にあるFCVホンダクラリティは、このステーションで充填されています。
もともと長州産業は、日本では珍しくなってきている太陽光パネル製造事業者です。高性能のパネルを製造して、価格が安い中国産パネルとの差別化を図っています。パネル製造工場も視察させてもらいましたが、価格競争にも勝たねばならないので、機械化・ロボット化が進んでいます。それでも、最終チェックは人が行っていました。この長州産業が、新たなビジネスとして70MPaの再エネステーションを製造・販売しているのです。
水素エネルギー社会へのロードマップは、水素のつくり方も化石燃料由来から、再エネ等Co2フリー水素へ進化させることを前提としています。多くの台数を扱う本格的な水素ステーションとSHIPSのような小型ステーションが各地に相まって水素社会のインフラが整っていくことになるのです。
周南市を先頭に、山口県は水素エネルギー社会を構築するために大きな貢献をしています。特に周南市の取り組みは、副生水素が多量につくられているという事情があったから、というだけでなく、次の時代への変革の取り組みが行われいるのです。僕はこれらの先導的な取り組みが実証実験の期間のみ、つまり補助金が終れば、取り組みも終わってしまうという事にならないように、しなくてはいけないと思っています。
FCVのカーシェアリング(貸出し)、小・中・高・大、各学生への普及啓発、市民への漫画配布等の啓発、新たなテクノロジーの採用と人が行動変容を起こす為の仕組みづくり…、これらが本格的な水素エネルギー社会を構築する事例になるのです。実証実験が事例となるのではなく、周南市で実装されることによって事例となっていくのです。
周南市を視察し、実証現場を体感し、担当する行政や製品を開発している企業、利活用している企業等、様々な方の意見を聞きました。その上で、周南市がこれから入る新たなフェーズに際し、何を考え、何を行動し、何を社会に伝えていかねばならないのか、自分なりの考えをまとめてみたいと思っています。水素エネルー社会の構築は次世代への責任を果たす事です。
編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2019年8月26日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。