水素で生きる街:山口県周南市の未来①

山口県周南市は、石油コンビナートが集積し、苛性ソーダ工場から純度99.9%以上の水素が副生されています。年間水素発生量は、全国では318億N㎥、山口県は33億N㎥、周南市は14億N㎥となっています。

その水素を如何に有効に利用し、環境に優しい街づくりを行っていくのか、それが周南市の「水素モデルタウン事業(2007〜2011年)」なのです。その上で、地元コンビナート関係、エネルギー、交通、自動車メーカー等の企業に参画してもらい「周南市水素利活用協議会」を立ち上げて「周南市水素利活用計画」を2015年に策定。着実に水素による街づくりを進めているのです。この周南市の先駆的な取り組が、将来にわたって周南市の強みになり、街づくりにつながらなくてはいけないと思うのです。

トクヤマ内にある液化水素製造工場である山口リキッドハイドロジェン、東ソーの隣接地にある圧縮水素製造工場である岩谷瓦斯から水素が供給され、街に水素が運ばれるのです。その1つが、地方卸売市場に隣接して設置されている「イワタニ水素ステーション山口周南」です。

水素の圧縮にリンデ社(ドイツ)のイオニックコンプレッサーを採用しているステーションです。このステーションの特徴は、卸売市場で使用されている35MPaのフォークリフトの充填と70MPaのFCV(燃料電池自動車)の充填が出来ること。そしてもう1つ、充填の開始と支払いが、別棟ではなくディスペンサーの近くで出来る事です。充填の開始、支払いが別棟となるとセルフ化する場合に不便になってしまうのす。

それは、JXが行っている横浜綱島ステーションでのセルフ化実証実験でも充填開始ボタンが別棟にあるため、利用者が直接押せず、ステーション職員が押すことになり、あくまで充填準備作業という位置づけになってしまうのです。また、山口県でもFCVはまだ普及機に入っているわけではないので、フォークリフトへの充填が収入では大きな意味を持っているようです。

このステーションから周辺施設に水素配管が敷設され、水素が供給されています。1つは300M先にある周南地域地場産業振興センターで、ここには3.5KWの純水素燃料電池が置かれています。室内で電気として、そして食堂のお湯として使用されています。1日当たり300㎥未満の製造であるためガス事業法の規制外となり自主保安を行っています。ここまでは公道の下や河川や橋梁の脇、センターの敷地を通って水素が運ばれています。

もう1か所は、卸売市場です。0.7KWの純水素燃料電池は場内の電気に使われています。100LWの純水素燃料電池は、電気を冷蔵倉庫、熱は花き保管庫やせり台での冷暖房に使われています。冷暖房は熱交換器ヒートポンプ、吸着式冷凍機、ファンコイルユニットを使い写真のように風を流しています。卸売市場らしい取り組みと言えます。

水素ステーションをFCVやフォークリフトに充填する場としてとらえるだけでなく、水素エネルギーを多角的に供給する場として捉える良い事例だと思います。水素はモビリティーだけに使用するものではありません。水素エネルギー社会にとって、モビリティーはそのうちの1つでしかありません。でも、わかりやすいアイコンであることには間違いないのです。

いつか、僕のトヨタMIRAIで、ストレスなく周南市まで旅行に行ける日を楽しみにしています。

②に続く。


編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2019年8月14日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。