歴史では、「天才」と呼ばれた人物が存在し、時代を動かしていた。その功績は現代に語り継がれ、私たちの知るところとなっている。
さまざまなタイプの天才がいるが、時代をさかのぼってどのような点が優れていたのか。今回は、『AI時代の「天才」の育て方』(市村よしなり。 著、きずな出版)を紹介したい。
ヒエラルキーが重視された時代の天才として挙げられるのが、 江戸時代を築いた将軍、徳川家康である。この時代の将軍は、いまでいうところの政治家であり、徳川家康は政治力が天才的に長けていた人物といえるだろう。
(市村さん)「特筆すべきは、 武家諸法度という、 全国を統治する画期的な制度を生み出した点です(公式には徳川秀忠の命となっているが、 実質的には家康が発布者だったといわれている)。この『発明』ともいえる政策を取り入れたことなどが後々にまで影響し、江戸時代は260年以上も続くこととなりました」
(同)「悪魔的な存在として語られることの多い、ナチス·ドイツのヒトラーも、 誤解を恐れずにいえば、ある種の天才といえるでしょう。彼の扇動したボピュリズムは、大衆の願望や不安を利用して国を動かしました。良し悪しは別にして、人々の心を掴み、マスを動かして国を支配したという点においては、 彼は天才的な人物といえます」
<構造そのものが変化した現代社会>
人の地位が明確に分かれていた「ピラミッド型」の時代では、政治カ、統治力に優れたヒエラルキーの上層に属する人が、バワーで他を圧倒できた。これらの人物が現代に生き、同じことをした場合、彼らを「天才」と呼ぶことはできるのか?
(市村さん)「答えはNOです。彼らは、 現代においては『天才』とはいえないでしょう。彼らは歴史に名を残すほどの人物です。現代に生きていれば、現代のニーズに合わせた能力を発揮したかもしれませんが、 それを確かめることはできません。現代社会においては天才的とはいえないというのが結論です。その理由は、 変化した社会構造にあります」
(同)「現代においては、ビラミッド型の階層社会はすでに過去のものとなっており、世界はフラットになっています。インターネットの発達により、 誰もが簡単に情報を得られるようになり、あらゆる人とつながれるようにもなりました」
多様化する社会の中で、 人々の二ーズは細分化している。過去のように、みんなが同じことに興味を持ち、同じニーズを持っていた時代は、もう終わっている。完全無人AI企業を経営し、小学生向け企業ワークショップも大人気で話題の著者が、これからのAI時代を生き抜く子を育てる方法を伝授する。
[本書の評価]★★★(75点)
【評価のレべリング】※標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★ 「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★ 「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★ 「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
星無し 「レベル0!読むに値しない本」50点未満
※2019年に紹介した書籍一覧
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※14冊目の著書『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)を出版しました。