旧東独の2州、ザクセン州とブランデンブルク州で1日、州議会選挙の投開票が行われた。ザクセン州では「キリスト教民主同盟」(CDU)が、ブランデンブルク州では社会民主党(SPD)が、それぞれ得票率を大きく失いながら第1党の地位を堅持する一方、予想されたことだが極右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が大躍進し、両州で第2党に進出した。
投票率は両州とも前回(2014年)を大きく上回り、ザクセン州で約65%(前回49%)、ブレンデンブルク州は約60.5%(47.9%)と、有権者の選挙への関心の高さを示した。
この結果、両州とも第1党を中心とした連立政権が発足する予定だが、CDUとSPDは第2党のAfDとの連立を拒否しているため、議会で安定政権を確立するためには3党連立政権を発足せざるを得なくなり、連立交渉は難航が予想される。
ザクセン州議会(定数112)では、ミヒャエル・クレッチマー首相が率いるCDUが前回比で得票率を7.3%失ったが、32.2%で第1党をキープした。前回は難民・移民反対、外国人排斥を訴えるペギーダ(Pegida)やAfDがまだ存在しなかったが、今回はAfDの躍進もあって得票率が下がることが予想されていた。そのため「30%台の得票率」はまずまずの成果と受け取られている。SPDは7.7%で前回比4.7%減と低迷した。
一方、AfDは対前回比17.8%増やして得票率27.5%と躍進し、CDUに次いで州第2党に躍進した。興味深いのは、旧東独の伝統的左派「左翼党」が10.4%に留まり、8.5%減と大幅に得票率を落としたことだ。連邦レベルでCDUと第1党を争う「同盟90/緑の党」は2.9%増で8.6%に留まった。
ブランデンブルク州議会選(定数88)では、ディートマー・ヴォイトケ州首相が率いるSPDが26.2%で前回比で5.7%減だったが、第1党を維持し、選挙後はSPD主導の連立政権発足が濃厚だ。同州でもAfDが23.5%で前回比11.3%増と大きく得票率を伸ばし、ザクセン州と同様、第2党に大躍進した。CDUは15.6%で7.4%減で第3党。左翼党はここでも7.9%減で10.4%と大きく得票率を失った。なお、両州で自由民主党(FDP)は議会獲得の得票率5%を獲得できず、州議会進出は実現できなかった。
旧東独の両州議会選は 第4次メルケル連立政権の行方を左右する選挙となるかもしれないと注目されていたが、州選挙で連敗が続くSPDがブランデンブルク州で政権維持の公算が濃厚となったことから、SPD内でくすぶり続けきた「SPDの低迷はCDUとの大連立が主因」としてメルケル政権からの離脱を要求する声が沈静化し、党内議論は今年12月初めに開催される党大会まで延期される見通しが高まった。
なお、テュ―リンゲン州議会選が10月27日に実施されるが、同州ではSPDは「同盟90/緑の党」より支持率が低く、SPDの期待度は大きくないことから、同州議会選の影響は連邦レベルでは大きくないと受け取られている。
メルケル首相は旧東独の州議会選挙結果を歓迎し、SPDとの大連立政権を継続できると確信。SPDのシュルツ財務相は、「ブランデンブルクの社民党はよく頑張った、SPDは選挙で勝利できる政党であることを示してくれた」と同州SPDの活躍を評価する一方、「AfDの躍進をこれ以上許してはならない」とAfDの動向に警告を発することを忘れなかった。
東西ドイツの再統一から今年で30年目を迎えたが、旧東独国民には、「われわれはベルリンから理解されていない」といった不満や怒りが強い。2015年以後は難民殺到もあって旧東独では外国人排斥、難民受け入れ反対の声が高まり、AfDが旧東独国民の抗議票を吸収して飛躍してきた。
そのとばっちりを受けたのは、これまで批判票の受け皿だった左翼党だ。同党はザクセン、ブランデンブルクの両州で今回、大きく得票率を失った。
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「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年9月3日の記事に一部加筆。