現在、依存症の予防教育の必要性が叫ばれておりますが、そもそもこれまで一部の当事者・家族と支援者以外誰も知らなかった依存症のことなど、誰が教育できるの?ってことになりますよね。
よくある薬物乱用防止教室の「ダメ、絶対」教育なんて、依存症の予防教育とは全く別物であり、
そもそもアルコール、ギャンブル、ゲームは「やっちゃダメ」っていうくくりでは話せませんよね。
特にゲームは、子供たちに直撃しているにも関わらず、国はなんの予防策もないまま、e‐sportsまで推進しようとしているくらいなんですから、「予防教育の推進」なんて今のところ絵にかいた餅状態なんですよね。
でも、そう言っていても状況はよくならないので、立ち上がってくださったのが、特定非営利法人 アスクさんです。この代表の今成知美さんはアルコール問題の市民活動家で、すでに36年の歴史を持つ大先輩です。そしてこのアスクさんが、厚生労働省の助成を受け開始したのが、「依存症予防教育アドバイザー」という認定資格制度です。
このアドバイザーになるには、「何らかの立場で依存症の支援に関わったことがある人」等の条件があるのですが、
第2回ASK依存症予防教育アドバイザー養成講座(2019年度) 募集要項
8月30日、9月1日の2日間で、2期生の講座が開催された際には1期、2期とも募集人員30名のところ90名以上の応募が来る!という大人気講座でした。
応募される方々も、医師、援助職、弁護士、ソーシャルワーカー、薬剤師、マスコミ関係者、そしてもちろん我々の様な当事者、家族など、様々な分野の依存症応援団が参加するんですね。
これがホント面白いんです。
もちろん私も認定を受けていて、今は講師としてもお手伝いさせて頂いています。
こちらが2期生の皆様
最終日には確認試験があり、これで合格点に達していないと合格はできません。残念ながら、ここをクリアできない方ももちろんいます。なので2期生の皆さんは、今はハラハラドキドキの結果待ち…という状況にあります。
今年は、ちょっと面白いメンツが集まりまして、司会を1期生で合格した元NHKアナウンサーの塚本堅一さんがつとめられ、受講生には、元NHKうたのお兄さんの杉田あきひろさん、俳優の高知東生さんがいたんですね。
さて、この3人には共通項があるのですが、何だか分かりますか?
もちろん違法薬物の所持等で逮捕されたというのも共通項なのですが、それがこのお3人同じ2016年に逮捕された、依存症界の「花の2016年組」なんです。
「花なんて不謹慎なこと言うな!」なんて思う一般の方がいるかもしれませんけど、こっちから見たら、これだけ知名度のある人達がどん底から「回復した!」っていうことが素晴らしい事実であり、しかもこうして仲間になって貰えたって実に嬉しいことなんですよね。
会場で3人とも2016年逮捕から全員が湾岸署に拘留されたってことが話題になったり、「逮捕されたのは、マトリ?警察?」「お~!俺もマトリ。一緒~」なんて薬物あるあるも飛び出し、会場全員があったかい笑いで包まれるという出来事がありました。
人間は完璧じゃないし、心が疲れた時に違法薬物に手を出してしまう人もいます。
日本では、違法薬物の使用者が極悪人の様に扱われますけれども、そもそも罪にすらならない国だってあるくらいなんですから、大切なのは「なんで手を出したんだ!」と叱責し排除するよりも、「その心の傷はなんだったの?これからは使わないで済むようにしようよ。一緒に考えさせて!」と言える社会の方がよほど健全じゃないでしょうか。
かつて薬物で逮捕された著名人は、自分の恥となるような過去の出来事を、一切語らず、触れずにきました。けれども時代が代わり、こうしてご自分たちの経験を社会に役立てようと、同じ問題を抱えている人、また水際に居る人達のために、過去の自分の失敗を堂々と語ってくれる著名人の方々が現れました。
これこそ本当に勇気のある人たちではないでしょうか?
私たちは、感謝しています。
インターネットやSNSの時代になり、人々はなかなか過去の出来事を、忘れてくれなくなりました。そして許す心を奪われていきました。けれどもその頑なな心は、実は自分に跳ね返り「こうあれねばならない!」「失敗できない!」という、強迫観念にみまわれ、息苦しく、生きづらくさせているんですよね。
私たち「依存症予防教育アドバイザー」は、「依存症は回復できる病気」という正しい知識を広め
失敗を許し、回復を励まし、そして社会の好循環を生んでいきたいと願っています。
さて、塚本堅一さん、杉田あきひろさん、高知東生さん、我々依存症界の花の2016年組が、今週の金曜日9月6日に勢ぞろいして、座談会を行います。
他では聞けない、依存症問題のあるある話を、是非、聞きにいらしてください。
詳細、お申し込みはこちらから!
田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト