予備自衛官の実効性向上に、予算拡充と法整備を --- 角田 晶生

寄稿

写真AC:編集部

現在、予備自衛官として平素は民間で働きながら年5日間の招集訓練に出頭しているが、先日、仕事中に電話が入った。

「いつも予備自衛官としてありがとうございます。ところで、即応予備自衛官にご志願いただけないでしょうか……(要約)」

電話の主は、自衛官等の募集を担当している地本(地方協力本部)の予備自衛官担当である。

即応予備自衛官は陸上自衛隊にしか置かれておらず、任官すれば自動的に陸上自衛官となってしまう。

募集のノルマが厳しいところ申し訳ないが、3等海曹にもなって今さら陸上自衛隊に籍を置くのは、どうにも居たたまれない。まさか2等陸士からやり直しではあるまいが、と言って階級だけ3等陸曹になっても、勝手も分からぬ現場では役に立つまい。

いざ有事には現場の第一線で任務に当たる即応予備自衛官だけに、こと陸上では荷が重すぎると辞退させて頂いたが、実に微妙な気分が残った。

「自分は、海上自衛官として不要な存在なのだろうか?」

……予てより、薄々そんな懸念はあった。確かに、現役部隊が有事に出動した留守を預かるのが主任務とは言え、自分たちが受けている年5日間の招集訓練で、どれだけ役に立てるものだろうか(もちろん、訓練自体は士気・練度の維持向上に有益であるが、質量的な課題は実感している)。

予備自衛官の行進訓練(公式Facebookより:編集部)

今後、予備自衛官は陸上自衛隊だけに統合され、海上・航空の予備自衛官は不要とされてしまうのだろうか。現にわざわざ海上から引き抜こうとしているくらいだから、当たらずとも遠からず、なのかも知れない。

しかし、予備戦力は陸上・海上・航空それぞれ現場の裁量で運用できるよう確保しておかねば、いざ有事になって中央(防衛省)へいちいちお伺いなど立てていられない。それこそ平和ボケの発想(システム)に他ならない。

即応予備自衛官の拡充が必要だというなら(その主張には筆者も大いに賛同するが)、陸上自衛隊だけでなく海上・航空自衛隊にも導入すべきである。

誠に不本意ながら、現状において海上・航空の予備自衛官が役に立たない、あるいは実効性に課題があると言うなら、安直な陸上自衛隊への統合よりも海上・航空の現場における予備自衛官の強化こそ重要である。

訓練時間や予算、教官や代替要員の確保など、実現に際して課題は山積している(予備自衛官の側も、訓練出頭に際しては休みを取る者が大半である)。しかし、始めないことにはいつまで経っても我が国の防衛体制は整わない。

限られた予算と物資・人員の中で表向きの帳尻をやりくりするため苦心している地本や現場の努力は察するに余りあるが、大規模災害や国際的緊張など、自衛隊への期待とニーズが高まっている昨今、国政を預かる方々には是非とも防衛予算の拡充と、予備自衛官の精強・即応性を高める法整備を求めたい。

角田 晶生(つのだ あきお)フリーライター。
1980年、神奈川・鎌倉生まれ。海上自衛官の任期満了後、2010年より現職。2011年より予備自衛官(現:予備3等海曹)。現場での経験に基づく執筆・寄稿多数。メインジャンル:防衛、政治、歴史文化など。防衛・人材育成・歴史・地域文化などをメインに、職業やボランティア経験に基づく寄稿多数。