同性をパートナーに選ぶ遺伝子?

中村 祐輔

いつまでも暑さが続いている。シカゴにはなかった、この纏わりつくような蒸し暑さでかなりへばっている。特に8月後半からの20日間で出張が6回もあったので、背中も、腰も悲鳴を上げている。体重も過去40年で最小になった。そのためか、血糖は正常に戻ってきた。

ちなみに、この20日間に

大阪 1泊2日
高知 1泊2日、その翌日
札幌 1泊2日
軽井沢 1泊2日
盛岡 日帰り、その翌日
大阪 1泊2日

とまさに、旅芸人並みである。

訪問の目的も多様であり、旧友や初めてお会いする方々など色々な方と話をする機会を持つことができて、得るものも多かった。同じ領域の仲間だけと話をしても、世界が限られているが、異分野の方々と話をすると刺激を受けることが多い。

しかし、如何せん、体力がついていかない。幸いなことに、今月は月末のがん学会までは出張がないので、少しゆっくりできるが、月末に内閣府のプロジェクトに対する視察という大きな案件が控えている。そして、来月第2週からの1か月で、再び、メキシコ、滋賀、福岡、松山、大阪、福岡と出張が続く。ANAのマイルは貯まるが、体力は間違いなく消耗する。

私は、今、「がん治療革命」「プレシジョン医療」「人工知能ホスピタル」のプロジェクトに取り組んでいるので、話題も多様で、対象とする聴衆も専門家から一般の方まで多種多様である。こんな方法で自分の考えを伝えていくのは非効率かもしれないが、今は地道にやっていくしかない。とはいっても、ユーチューブを利用して毎週15分くらいずつの画像をアップすることも考えている。魅力あるものにするためには協力者が必要であるので、ブログ読者の知り合いにこの方面に得意な方がいれば是非教えて欲しい。

と本題に入るまでにスペースを割きすぎたが、今日のテーマは、Science誌に掲載されていた「Large-scale GWAS reveals insights into the genetic architecture of same-sex sexual behavior」についてである。同性のパートナーを選ぶことに関連する遺伝子についての論文だ。

acworks/写真AC(編集部)

UK(イギリス)のバイオバンクに登録されている約50万人のうち、男性で4.1%が、女性では2.8%が同性とセックスをしたことがあると自己申告していた(ちなみに23&Meに登録されている人の同性とのセックスをした経験のある方は18.9%と非常に高いそうだ)。これらの方の遺伝子多型を調べたところ、5か所の性的嗜好に関連する可能性のある遺伝子部位が見つかった。

これらの部位はホルモンの調節と臭いに関係するようだ。また、外交的で、リスクを取る性格にも関連することが示唆されている。これらの遺伝的要因はこのような性的方向性の8-25%を説明する。言い換えると、遺伝的要因以外の要因も大きいということだ。

持って生まれた遺伝的な要因は天から与えられたものである。繰り返して述べているが、「遺伝子差別が生まれる」などと叫んで遺伝子研究にブレーキをかける自称倫理学者は大嫌いだ。遺伝子の違いを認め合い、互いを尊重する教育をしていくことが、人の道、「倫理」ではないのか。人を批判することでふんぞり返り、「私は倫理学者だ」と嘯いていて、世の中が良くなるのか!

みんなに個性があり、それを認め合う社会にしていくのがわれわれの責任ではないのか?LGBTも、天から与えられた人間の個性の表現ではないのか、それを科学的に示してくれたのが今回の論文だ。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2019年9月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。