韓国の日本叩きをみていると、子供が気に食わないといって声を上げて喧嘩を仕掛けているようだ。国には品格、威信が伴わなければ、相手国から「品格のない国」として軽蔑されるが、韓国の現在の反日攻勢は国家の品格云々のレベルではなく、残念ながら、低次元なプロパガンダに過ぎない。
今月に入ると、韓国側の日本批判はその激怒を増してきた。まるで何かに憑かれたようにだ。
①来年開催のパラリンピックのメダルの図柄が「旧日本軍の旭日旗を想起させる」として、韓国側の関係者が対応を要求。
②福島第一原発からの汚染水にトリチウムが含まれている。ウィーンに本部を置く国際原子力機関(IAEA)にソウルから使節団を派遣し、日本の原発からの汚染水問題を国際問題に仕立てようとする動きをみせている。
③韓国関税庁は日本から輸入される工業製品に対し放射性物質検査を強化する方針を固めた。
韓国側は、福島第一原発からの汚染水にトリチウムが含まれ、それを海洋に流せば環境汚染問題が懸念されるというが、韓国の月城原発からはこれまで大量のトリチウムが含まれた汚染水が海洋(日本海)に流されてきた。韓国側はそれを水で薄めて処理してきた。
月城原発からのトリチウムが人体や環境を汚染する危険性がないように、福島第一の汚染水に含まれているトリチウムは人体や環境に影響がないことを知っていながら、環境汚染の危険があると騒ぐ。恣意的な、悪意のあるプロパガンダだ。
元原子力発電環境整備機構(NUMO)理事の河田東海夫氏は9日、「アゴラ言論プラットフォーム」に寄稿し、
「月城原子力発電所からのトリチウム年間放出は、トリチウム回収設備の導入や一部原子炉の停止などで2010年以降半減しているが、2009年までは400テラベクレルを超えていた。4基体制に入った1999年10月以降だけで見ても、これまでに累積で6000テラベクレルを超えるトリチウムを放出してきた。
福島第一原発に貯留されているトリチウム総量は760テラベクレル(2016年3月時点)なので、月城原子力発電所の累積放出量はその約8倍にあたる」
と指摘し、韓国の科学技術情報通信省関係者はその事実を知っているが、文政権の日本叩きに駆り出されていると喝破している。
なぜ韓国側は後で反論が難しくなるような情報をもとに反日攻撃に乗り出すのだろうか。韓国国防部の朴宰民次官は、「日本側が我が国を信頼できないとして、経済制裁を実施したからだ」と弁明し、「全ての責任は日本側にある」と、いつもの責任転嫁を繰返す。その論調は「相手が先に手を出した」と泣き叫ぶ子供の姿と重なる。
日本政府は8月28日、韓国を輸出国審査優遇国リスト(ホワイト国リスト)から外すことを決定したが、サムソンは日本から従来通り、スマートフォン製造に必要な素材を輸入している。ホワイト国リストからの排除は輸出管理の見直しの一環に過ぎない。それを「日本はわが国を信じていない」と受け取って、ゴネているわけだ。
“日本叩き”のラッパ吹きの張本人、文在寅大統領はそんなことをよく知っている。ただ、その機会を利用しているだけだ。聯合ニュースによれば、「韓国政府は10日、日本の対韓輸出規制に対応するための関係閣僚会議を開催し、素材・部品・装備(装置や設備)産業の100以上の品目に対し、研究開発(R&D)を支援するオーダーメード戦略を年内にまとめることを決めた」という。文政権は素早い対応を見せているが、文政権下では成果が出る問題ではない。それを知った上で、政権批判をかわすためにアピールしているだけだ。
そして韓国は日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を決定した。あれもこれも、すべて日本の対韓国経済制裁のせいだという。慰安婦問題はまだそれなりの論理はあったが、元朝鮮半島出身戦時労働者(いわゆる「徴用工」)問題から韓国側は堂々と国際条約を無視し、その勢いに乗ってGSOMIAから離脱した。文政権は確信犯だ。シナリオに沿って一歩一歩手を打ってきている。
故金大中大統領は日本との関係を理解していた。国家関係は好き嫌いではない。韓国の国益から対日関係を考えていた。一国の大統領として当然だ。それでは文在寅大統領には、韓国の経済的、外交的国益より、さらに重要な何かがあるのだろうか。日本との経済関係に大きなダメージが生じたとしても優先しなければならない何があるのだろうか。考えられるシナリオは、南北再統一、朝鮮半島からの米軍の追放だ。そして行きつく先は核兵器を保有した南北統一コリアの出現だ。そのシナリオに乗って文政権は着実に歩んでいるわけだ。
文在寅大統領は、国内世論の強い反対にも関わらず、娘の不正入学疑惑の渦中にある曺国前青瓦台民情主席秘書官を法務部長官に任命した。世論の動向にあれほど気を遣う文大統領が曺氏をどうしても長官にしたかった理由があったはずだ、と勘繰らざるを得なくなる。
文大統領は9日、「私を補佐して私と共に権力機関の改革のため邁進し、その成果を見せた曺長官に(改革の)仕上げを任せたい」とする談話を発表している(聯合ニュース9月9日)そうだ。検察当局を打倒し、積弊清算の総仕上げ、そして無血革命を実行するという宣言だ。
韓国のGSOMIA離脱に対する日米からの批判は厳しい。朝鮮半島の北朝鮮の非核化を推進している時、軍事情報の交換を止めるということは安保オンチしかできない愚策だ。好き嫌いの問題ではなく、生命の安全問題がかかっている。韓国の指導者はそれを忘れているのだ。そんな国があるだろうか。当然の批判だが、文在寅大統領の耳には届かない。
文政権は国際社会でアピールしやすい福島第一原発の汚染水の処理問題を持ち出し、GSOMIA離脱に対する日米らの批判をかわしながら、国内では着実に無血革命を推進させている。日本叩きはその無血革命から国際社会の目をそらすための手段に過ぎない。文大統領は、南北再統一、核保有国の統一コリアの誕生を夢見ているのだ。ワシントンからニュースが流れてきた。トランプ米大統領は10日、ジョン・ボルトン国家安保問題担当大統領補佐官を更迭した。文政権にとっては対北強硬派の筆頭ボルトン氏の更迭ニュースは朗報だろう。
日本を落とすために叩いているようで、実は韓民族の品格と威信をズタズタに傷つけている。信念に生きる確信犯の文在寅大統領にもはや何を言っても変わらないだろうが、今回も最も犠牲となるのは韓国国民だ。韓国では、国民を思い、国家のために献身する立派な指導者はどうして生まれないのか。
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「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年9月12日の記事に一部加筆。