台風15号の影響が大きく、千葉県の一部では依然として停電・断水が続いている。当初の東電の甘い復旧予測が、結果として、復旧の遅れにつながっているようだ。
鉄道の計画運休も安全対策として重要だが、甘い再開予測が、月曜日の朝の大混乱につながってしまったのではと思う。午前8時再開を信じて並んだ方々にとっては、相当なストレスではなかったろうか。過去と比較して、最大級の風が吹く可能性を気象庁からも指摘されていたのだから、倒木などのリスクを織り込む必要があったのではないだろうか?
20年近く前に、シカゴから東京に戻る予定の飛行機が整備に時間がかかるので、1時間遅れとなった。ようやく乗り込んで待ったが、整備が完全にできなかったようで、1〜2時間後に飛行機から降ろされた。代わりの飛行機を3時間くらい待って、再度、搭乗した。なかなか出発せずに、機内で1時間ほど待たされた後、機内アナウンスで、「乗務員の勤務時間オーバーとなるので、フライトが取りやめ」と告げられた。
「こんなことぐらい、簡単にわかるやろうが!人をおちょくってんのか!」と心の中で大阪弁で叫んだが、気の弱い私は、隣の乗客には「仕方ないね」と微笑んで飛行機をあとにした。どこから乗り継いだのか覚えていないが、シカゴ空港で午前中早くにシカゴ空港に着いたが、空港近くのホテルにチェックインしたのは夜遅くだった。その日の最低気温はマイナス20度くらいだった。予定が少しずつずれこんでいくのは、結構な大きなストレスになると感じたものだ。
今回の台風による停電も、明日が、また、明日に延び、5日間も停電が続いている。メディアも日々復旧の遅れを指摘している。危機管理の原則は最悪のケースを想定して行うのが常識だと思っていたが、今回の状況はどこから見ても危機管理の欠如と言わざるを得ない。
ドローンなどで上空から観察すれば、もっと正確な状況を把握できたはずだし、信じがたい思いがする。今、テレビでは復旧が1週間後、2週間後になる地域があると言っている。「思っていたより倒木が多かった」は今頃言うコメントではないと思う。危機対応には、状況の正確な把握が不可欠なはずだ。
そして、私が最も気になっているのが、停電の続く中で病院や医院の診療情報がどうなっているのかだ。災害時に復旧を急ぐのは大切だが、最重要事項は被災地住民の健康管理である。電子カルテ化されている中で、停電が続き、病気の経過や投薬情報がしっかりと把握されているのかが気がかりだ。停電世帯数の大きさを考えれば、薬が切れてしまった方もおられるかもしれないと心配になってくる。診療情報を個人個人が管理する状況を早く実現して欲しい。
東日本震災時の復興会議メンバーに医療関係者がいなかったことは以前にも述べたとおりだ。当時の政権には、パーフォーマンスと自分の選挙のために活動していた人が目立ち、被災地の方々の長期的な健康管理には関心がなかったようだ。自民党政権には、この点を十分にカバーできる能力があるはずだ。
熱中症で死亡された方の報道を目にするたびに、被災地の方々の健康管理に国を挙げて取り組んで欲しいと願わざるを得ない。ストレスで体調を崩している方も多いに違いない。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2019年9月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。