「一人暮らしをして社会人として一人前」は本当に正しいのか?

黒坂 岳央

こんにちは!黒坂岳央(くろさかたけを)です。
■Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

「一人暮らしをしてこそ、社会人として一人前だ」という主張があります。私も昔はこの主張を正しいと思っていた時期がありました。しかし、今ではこの考え方に賛同をしていません。2chのスレッドでも「社会人の一人暮らしはそんなに偉いのか?」というものがあり、書き込みの内容を見てみると賛否両論あるようです。

amshyles/写真AC(編集部)

今回は思うところを述べていきたいと思います。Twitterでも、自分の考えを話してみます。

今の時代、一人暮らしは難しくない

私は大学卒業と同時に上京し、一人暮らしを始めました。それまでは実家暮らしと、アメリカの大学寮で生活をしてきたので、初めて一人暮らしにワクワクしていたのを覚えています。「これでようやく、自分も一人前になるのか」という感覚を持っていたのです。

しかし、いざ念願の一人暮らしをしてみたところ、想像していたほど大した話ではないことが分かりました。「自炊」「洗濯」といった作業も、慣れてしまえばやることはルーチンワークに過ぎません。料理は本を見ながら作ったり、今ではYouTube動画もあります。スーパーで材料を買ってきて、マニュアル通りやるだけでよく、3-4回同じものを作れば何も見ずに作ることができます。

また、洗濯は服を洗濯機に入れて洗剤を入れてスイッチを押し、終わったら干すだけです。また、ゴミ捨ても決まったタイミングで捨てに行くだけでしかありません。家事は慣れの問題でしかないので、1か月後にはすっかり飽きてしまいました。

才能も年齢も関係なく、慣れれば誰でもできてしまうようなルーチンワークをやることが、はたしてそんなに偉いのか?社会人として立派なのか?と疑問を感じていました。私は今、一人暮らしをやめて奥さんと過ごしてますが、本質的には一人暮らしの時とあまり変わりません。今でも料理を作ったり、ゴミ出しをしたり、洗濯物干したり、子供を保育園に送迎するということをやっています。

かつてはお米を炊いたり、お風呂を沸かしたりするのに非常に骨を折る時代がありました。しかし、今は家事のほとんどはスイッチを押すだけで半自動で済んでしまいます。今の時代に、一人暮らしをして生きていくことがそこまで立派なことのようにどうしても思えないのです。

実家暮らしだから成功した人たち

私のビジネス上の付き合いがある人たちから、面白い話を聞いたことがあります。彼らはアフィリエイトや、インフォプレナー、ネットショップ、せどり、輸出ビジネスなどで大きく稼いでおり、月収400-500万円くらいを稼ぎ続けています。

そんな彼らが私にしてくれた話というのは、ビジネスで稼げるようになるまで、ずっと実家暮らしをしていたというのです。彼は20代・30代の若い世代ではありますが、同年代の人たちはとっくに社会人デビューをして一人暮らしをする中、長い間実家暮らしをしていました。最近の流行りの言葉で言うと「子供部屋おじさん」の予備軍たちです。

そんな彼らから話を聞いたのですが、その内3人から「実家暮らしをしていたから成功できた。親に感謝している。実家ぐらしで面倒な家事などから開放されていたので、ビジネスに集中できた。やろうと思えばできるけど、家事に時間を取られるとその分成果が出るのが遅れてしまうので、有利な立場に立つためにも実家を出るのが遅かった」と口を揃えます。

世間一般的には、20代なかばを超えた社会人が、いつまでも実家暮らしをしているのは「生活力がないから」「精神的に未熟だから」というネガティブな印象があるのかもしれません。しかし、ビジネスや投資の時間を捻出するため、合理的な選択肢として実家に住み着いていたのなら、違った風景が見えてくるのではないでしょうか。そして彼らはビジネスが軌道に乗った後、実家を出て一人暮らしをしたり結婚をして家庭をもっています。

「必要に迫られればやるけど、合理性がないからあえて選択しない」という結果としての実家暮らしに、マイナスはないと思うのです。

固定費を削減する重要性

私はお金を使う上で、気を付けていることがあります。それは変動費ではなく、固定費にこそ意識を振り向けるべきだという考えです。固定費の恐ろしいところは、支払いを続けていくうちにいつの間にか「意識の中から消えてしまう」という点にあります。

固定費の多くは、自動引落やクレジットカード支払いをしていると思います。たとえば家賃、サーバー代、通信費、電気ガス水道、保険料などです。毎月、音もなく静かに口座から引き落としがされていますが、それを見直す機会はあまり多くはありません。賃貸物件に問題なく住んでいると、「今の住んでいる家の家賃がもったいないから、見直しとともに引っ越しの可能性を検討しよう」ということはあまりありません。そのような見直しが発生するのは、多くの場合は結婚や出産や転職など、数少ない機会に限られます。

そうなるといざ、賃貸物件に入居する際に「せっかく長く住むなら築浅で快適なところに」と背伸びして住んでしまっても、そのまま長い間固定費として賃料を支払い続けることになります。そしてそれは次の引っ越しの時まで変更することは容易ではないのです。

実家に住めば10年で1,000万円を削減できる

固定費の代表格である賃料はかなりのウエイトを占めます。東京で家賃8万円の物件というのは、決して「高い部類」ではありません。しかし、1年住むと約100万円になり、それが10年で1,000万円、20年では2,000万円の出費になります。仮に関東に実家がある人で、そこから職場に通うことができるのであれば、この2,000万円というお金を手取りで、税引き後に丸ごと受け取ることができる計算になります。

そして2,000万円を支払うことによって得られる効用が、2,000万円以上の価格でなければ、少なくとも理屈の上では一人暮らしをする合理的な理由がないことになります。

今から人生やり直すなら実家暮らしで立て直しもあり

もしも、私が何もかも失ってゼロからスタートすることを考えてみました。まずは固定費を徹底的に削って、生活レベルを出来る限り下げるところからスタートすると思います。食費はすべて自炊で1か月1万円、家賃は1ヶ月4万円程度、後は最低限の通信費とビジネスインフラを整えれば、一ヶ月6万円前後で生活をしながらビジネスで収入を増やす挑戦ができます。

家賃を減らすためなら、ルームシェアでも、木造アパートでも、郊外でもなんでもいいので、とにかく固定費を安く下げ、安く生活しつつその一方でビジネス収益の拡大を狙っていくことでしょう。状況が許せば、実家に頼み込んで安く済ませてもらうというのは、生存戦略として大いにありだと感じます。

「社会人でも一人暮らしをする必要はない」という主張は、経済的合理性はあるかもしれませんがおそらく婚活事情などでは敬遠されてしまうでしょう。「実家暮らし=生活力がない」というイメージを持たれてしまうかもしれませんが、「実家暮らし=経済的合理性故の選択、家事全般は必要なら全部出来る」という実践力を持っていることを話せば、人によっては理解を示してくれるかもしれませんね。

このような主張には多くの反発も予想されます。しかし、個人的には実家暮らしが無条件に叩かれるのはおかしいと感じましたので、一言言いたくなってしまいました。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

■無料で不定期配信している「黒坂岳央の公式メールマガジン」。ためになる情報や、読者限定企画、イベントのご案内、非公開動画や音声も配信します。