イクメンからカジオ、イケオジへ 男に育児・家事を語らせろ

ときは、きた。

尊敬する同世代の小説家の海猫沢めろん先生、漫画家の宮川サトシ先生と一緒にイベントを開催する。9月30日に、下北沢B&Bにて。

常見陽平×海猫沢めろん×宮川サトシ「男が子育てしてわかった、日本社会のリアル」『僕たちは育児のモヤモヤをもっと語っていいと思う』(自由国民社)刊行記念 | 本屋 B&B

テーマは「男の子育て」である。これについて、モヤモヤを存分に語りあいたい。そう、公開の場で、男同士で、存分に語り合う、これがポイントなのだ。男が、育児、家事について語り合うこと、特に愚痴を共有すること、これが意外に難しい。ストレスがたまっている男性も多いのではないか?

育児ネタは必ず、炎上を誘発する。最近でも、小泉進次郎の育休問題が議論を呼んだ。ZOZOの田端信太郎氏の育児は短時間でこなせるというツイートも炎上した。CMなども、育児に関わる父、母の描き方で炎上する。社会において、会社において制度の充実が叫ばれる。一方、その制度が実現したところで、その恩恵を誰もが受けるわけではない。

この問題は「システム」だけの問題ではない。「規範」のようなものがあり。さらには、システムとして合理的であっても、「感情」の問題もあり。いくら合理的なことを主張しても、感情的に受け入れられないこともある。

たとえば、最新作で対談し、今回のイベントにもご登壇頂く宮川サトシさんは、この漫画をウェブで連載していた際に、育児への貢献度による心の中の「育児ポイントカード」について描いたところ、主に女性の読者から大バッシングを浴びたという。「育児にポイントとは何事か」と。

別に批判してきた女性を悪者にするつもりはない。その方々にも、様々な想いはあるのだろう。ただ、よく読むと、この「育児ポイントカード」は誰にも迷惑をかけていない。むしろ、宮川サトシさんの育児のモチベーションを高めるものであり、家族には役立っているものだとも言える。ただ、これで文句を言いたくなるというのは、それだけ不満がたまっているのだろう。

個人的にはナイスな取組みだと思う。最近、仕事においては締切に遅れることで、家庭においてはふらりとライブに行ってしまうことや高い服を買ってしまうことでバッシングにさらされている私も、信頼の貯金のようなものは大切にしている。この「育児ポイントカード」はモチベーションや信頼関係を維持する上で良い取組みだ。しかし、ウェブ上の論理は許してくれない。そして、男性が育児について語る機会が封殺されてしまう。

いま、出ている『SPA!』に、海猫沢めろん先生のインタビューが掲載されている。心が洗われる内容だった。奥様の地方国立大学医学部合格により、東京を離れ、熊本に移住した海猫沢めろん先生。家事、育児を積極的にこなすことにより、執筆時間は減った。東京から離れることは正直、辛かったともいう。しかし、家族に弱さをさらけ出すこと、家事・育児について完璧を目指さないことにより、イケてる父親になっている。

最近、漫画化された『キッズファイヤー・ドットコム』(講談社)は彼でなければ書けなかった作品だ。ホストたちがクラウドファンディングで子育て資金を集める異色作だ。熊日文学賞を受賞する他、野間文芸新人賞にノミネートした。育児のあり方について考える作品である。

海猫沢めろん先生が、『SPA!』でのインタビューで提言しているように、家事・育児や、仕事との両立について愚痴を言う「男子会」などの開催は有益だろう。このイベントもその第一歩になるといいと思う。

イクメンなる言葉は意識高い系ムーブメントのにおいもし、さらには美名のもとでの労働強化の側面もある。イクメンという言葉が存在することは、それが異常であるということも示している。イクメンからカジオ、イケオジへ、さらにはこれらも超えて、男女関係なく、働き、育てる時代に向け、このイベントでは徹底的に語りあうのだ。

9月30日、ぜひ、来て頂きたい。そして、語り合おう。
常見陽平×海猫沢めろん×宮川サトシ「男が子育てしてわかった、日本社会のリアル」『僕たちは育児のモヤモヤをもっと語っていいと思う』(自由国民社)刊行記念 | 本屋 B&B

最新作も騙されたと思って、手にとってほしい。ぜひ!


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2019年9月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。